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豪華列車、もてなし磨いて再登場 清掃・語学習得・安全対策

 高級感あふれる車内に滞在しながら各地を巡るJRの豪華寝台列車が、再び動きだす。新型コロナウイルス感染拡大で長期の運休中、スタッフは「おもてなし」の質を磨く充電期間に切り替えた。日をまたぐ長距離移動の「3密」回避策も決め、再び旅人を迎える。

 「お客さまや地域を元気にするお手伝いは何か、一から考え直した」。JR九州の「ななつ星in九州」は3月以降、予想外の休みに。クルーの塩島吉博さん(45)は、外国語での対応を充実させようと、習得済みの英、仏に続き、中国語に取り組んだ。ワインの勉強にも着手。九州産の食材とのマッチングを究める狙いだ。

 旅には鉄道を離れ、バスを使う観光もある。再開へ最大の壁となるソーシャルディスタンスを確保しようと、移動中や食事の場面を何度もシミュレーション。従来は最大30人の定員を16人に半減させた。発熱の場合は乗車を断ることもある。

 緊急事態宣言が解除され、いったん決まった7月の再開は、九州を襲った豪雨で再び延期。今月15日から熊本・阿蘇山や長崎の海岸を周遊するコースで走りだす。クルーは車両基地まで出向き清掃し車体を磨き上げた。JR九州の担当者は「ぴかぴかによみがえった列車で、豪雨の被災地にも笑顔と元気を届けたい」

 JR東日本の「トランスイート四季島」も今年1月以降、大規模検査と感染の影響が重なり、長期間運休に。この期間を生かし、サービスの在り方を見つめ直そうと、37人のクルー全員が訪ねたのは、東京・羽田空港の日航安全啓発センター。1985年のジャンボ機墜落事故の機体や遺品を展示する施設だ。

 チーフリーダーの宗平礼美さん(45)は「同じ交通機関として、空の大事故をみんなで勉強したかった」と訪問の理由を話す。センターは日航の事故後の取り組みも展示されている。「異常が起きれば、客室乗務員は命令口調で乗客に指示する。役割分担も明確で、私たちにも必要だと気付くことができた」と振り返る。四季島の訓練に、消防や救急のプロを招くことを新たに決めた。

 車内のテーブルやいすの距離は、スタッフがメジャーで一つ一つ計測してレイアウトを変更。食事も乗客が1カ所に集まらないよう分散する方法を検討、料理長は夜食の新メニューを考案した。

 列車の再開は8月15日。車両は外側、内部ともに塗り直した。初便は甲信越や福島の会津地方を巡る。宗平さんは「不安を取り除き、快適さをどこまで追求できるか、みんなで知恵を絞っている。早くお客さまに会いたい」。

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