□シークエンス取締役 LOGOSインテリジェンスフェロー 木村和史
■インド、シッキム州のインバウンド事情
インドは28の州と7つの連邦直轄地で構成されており、カジノについてはゴア州、シッキム州、ダマンディウ連邦直轄領で各州法および連邦法に基づき例外的に合法化されている。そのうち、合法的カジノ市場の約95%を占めるのが“インドのラスベガス”と呼ばれるゴア州で、残りの5%を占めるのがシッキム州である。
同州はインド北東部のネパール、中国、ブータンに挟まれた凸型の辺境地であり、隣接するチベットのダライラマに追われた亡命政権が立国したシッキム王国に由来する(1975年の王政廃止にともないインドに併合された)。州の人口は約65万人で75%がネパール系である。人口が増加する首都デリーなどと比べれば、人口密度も約60人と100分の1程度と密ではない。だが、シッキム州は周囲をヒマラヤ山脈に囲まれ、とりわけ標高8500メートルを誇るカンチェンジュンガの登山口でもあることから、今後、インバウンドも含めた観光振興の起点となることが期待されている。
このようにインドの大都市圏からは隔絶された地理的環境であり、外貨獲得も見込めることから、2009年に非居住民を対象に賭博が州法として許可されるに至った。現在、カジノは州都であるガントク市の「メイフェアスパリゾートカジノ」など州内に3カ所存在し、いずれもリゾートホテル併設型となっている。
そんなシッキム州であるのだが、今年5月初旬に同州も含めた中国境地帯で小規模な軍事衝突が勃発し、いまだ収束の目途が立っておらず、今後の外国人観光客の誘致に影響を与えるのは必至の状況である。
いまやインドは経済成長を続ける大国であり、人口規模でも中国をしのごうとしている。この成長を支える軸の一つであるインバウンドにおいて、世界遺産効果は欧米系の外国人観光客の誘致に成功しているが、今後、カジノを含むIRの誘致が加速するのかどうか。中国境地帯の政情および新型コロナウイルス感染拡大による影響を踏まえながら動向を注視していきたい。
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【プロフィル】木村和史
きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆なども手掛ける。