働き方新時代 識者に聞く

変革へ年功序列にメスを “枠組みを広げる”取り組みも

 日本総合研究所副理事長・山田久氏

 コロナ禍で進む働き方改革の動きをエコノミストはどう評価しているのか。労働問題に詳しい日本総合研究所副理事長の山田久氏に聞いた。

 --コロナ禍で働き方改革の重要性が改めて問われている

 「今後の日本の経済社会を維持するために変化が求められていた働き方をはじめとする改革が加速するのではないか。そのためのツールとされてきたテレワークなども急速に普及、活用され始めている」

 --働き方はこれまでも改革の必要性が叫ばれてきた

 「日本では2000年代をピークに人口が減少傾向に転じた。それと前後して、転勤や長時間労働を特徴としてきた“日本型正社員の働き方”ができる人は減少した。そこで女性やシニア層の経済社会への参画が求められているが、家事、子育て、介護など解決しなければならない課題も多い。多様な人材が多様な働き方で経済、社会に参画できる形への改革が必要だ」

 --海外で参考になる働き方はあるか

 「改革を実現する上では、デジタル化やグローバル化が肝要だ。その点では米国が進んでいる。米国はもともと人材が多様で、海外からの移民も受け入れている。とはいえ、リストラも簡単に行われ、勝ち負けもはっきりしており、それを許容できる社会でもある。これは日本にはなかなか難しい」

 「その点、スウェーデンやドイツの施策は参考にしやすいだろう。ドイツは短い労働時間と高い労働生産性を両立しているが、背景には産官学が一体になって進めている教育・人材育成の仕組みや、労使で決めた事業の整理に伴う雇用調整ルールがある。日本では人材教育や技術伝承などを職場が担ってきた。今後は、産業界の協力も得ながら再構築すべきだろう」

 --日本の働き方を変える上での課題は何か

 「まずは年功序列にメスを入れなければなれない。女性活躍のためには、男性との家事の分業も必要だ。同時にキャリアづくりも考えていく必要がある。こうしたことから変えていかなければ、結局はなかなか進まないだろう。テレワークなどを活用すれば、家事の分担などは解決できるものも増えてくる」

 --一連の変革は中小企業にとってはハードルが高そうだ

 「京都では中小事業者が集まって組織する発注システムが稼働してるが、中小企業にはこういった“枠組みを広げる”取り組みが必要かもしれない。地域や業界といった枠組みを広げ、それぞれに労働力を融通し合うなど、協働の仕組みがあれば仕事量の偏りやムダも防げる。それぞれが単独で全ての機能を持つのではなく、大きな枠で取り組まなければ解決しない課題もあるだろう」

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