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携帯大手2社は値下げせず、空白地帯に新プラン 競争活発化は不透明

 政府の携帯電話料金の値下げ要請に対し、KDDI(au)とソフトバンクは低価格帯の格安ブランドで新プランを導入して対応することになった。既存の大容量プランの値下げはせずに、データ容量20ギガバイトの空白地帯を埋める形となるため、値下げ競争の活発化につながるかは不透明だ。

 「値下げ幅は4割超になる」。ソフトバンクの担当者は菅義偉首相が主張してきた「4割の値下げ」に応えるプランと胸を張った。

 ソフトバンクが格安ブランド「ワイモバイル」で打ち出した新プランはデータ容量20ギガで月額4480円(税別)。既存の50ギガの大容量プランで音声通話などを同じ条件にすると8280円であり45%程度安い。

 KDDIが格安の「UQモバイル」で導入するプランもほぼ横並びの料金だ。そこまで大容量を必要としない利用者にとっては選択肢が増え、料金も安く済む。

 もっとも、利用者全体が恩恵を享受できるわけではない。調査会社MM総研によるとスマートフォン利用者の月間データ通信量は約7ギガにとどまっており、今回の新プランは「大多数の人に刺さるプランになっていない」と横田英明常務は指摘する。使い放題に近い大容量に慣れた利用者も満足できない水準で、乗り換えが進むかは未知数だ。

 20ギガという新プランの容量をソフトバンクの担当者は「動画視聴の普及が進み今後ニーズが高まる領域」とする。一方、世界6都市の料金国際比較では20ギガのプランで東京が最も高く、政府が値下げ要請の根拠とすることから、批判をかわすためにピンポイントで対応したとの見方もできる。

 新プラン導入は厳密には値下げではないが、政府は一定の評価をしている。KDDIとソフトバンクは主要ブランドでは高価格帯を維持して経営への影響を抑えつつ、安さを求める利用者には格安ブランドで対応する流れを作った格好だ。 残るNTTドコモはNTTによる株式公開買い付けの期間が11月16日まで続くため、新プラン発表はその後になる見通し。格安ブランドを新設しての対応も予想され「ドコモの出方次第でうちもプランを変更せざるを得なくなる可能性もある」(携帯大手関係者)との声も出るなど、競争環境を大きく左右しそうだ。

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