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ドコモ新プラン「ahamo」、大容量プランに移った顧客を引き戻す側面

 NTTドコモが発表した新プランは複雑な条件がついた割引のないシンプルな内容で、若年層向けを前面に押し出した。平均的な利用では十分な20ギガバイトのデータ容量を約3000円の安さで提供する新プランは、消費者に歓迎されそうだ。ただ、第5世代(5G)移動通信システムの普及でデータ消費量の急拡大が見込まれており、変化しやすい若者の需要に合わせて市場競争を続けなければ、支持を失うことになる。

 「20代の方の使い方に合わせると同時に(ブランドを)育てていきたい」

 1日に就任したばかりの井伊基之社長は3日の会見でこう強調した。新プランの発表は、企画に携わった入社3年目と5年目の若手社員がプレゼンする異例のお披露目となった。

 1カ月のデータ容量が20ギガバイトの料金プランを国際比較した総務省の調査で、世界最高値と批判されたドコモが最安の英ロンドンに一気に肉薄する。しかも、郊外ではつながらないようなロンドンとは比べ物にならない世界最高水準の通信品質も兼ね備える。

 民間調査会社のMM総研の調査では、2020年2月時点で一般的な消費者の毎月の平均データ利用量は6.94ギガバイト。約3割が1ギガバイト以下にとどまっている。20ギガバイト以下の利用は全体の9割を占める。新プランはこうした市場の声に応えた形だ。井伊氏は「ニューノーマル時代の新しいプランだ」と述べた。

 ただ、5Gで毎月のデータ利用量が20ギガバイト以上になれば、ドコモの新プランも簡単に陳腐化してしまう。鍵を握るのが、今回は発表を見送った従来プランの見直しだ。

 これまで料金プランが高額大容量と低額小容量に2極化していたのは、5Gを見据えて顧客を大容量プランに移行させ、データ消費を拡大させる狙いがあったからだ。新プランは大容量プランに移った顧客を引き戻す側面もある。

 井伊氏は「シンプルかつお得な新しい料金に変えていく」と月内に見直し策を発表する考え。将来も見据えた大容量プランと現在の需要に沿った新プランを両立できるか、井伊氏は厳しいかじ取りを迫られる。

 携帯戦国時代の序盤戦はドコモが主導権を握った。だが、井伊氏は「料金プランをチューニングしていくのはあるべき戦略。(市場の変化に)気づかないと取り残される」とかぶとの緒を締めた。(高木克聡)

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