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なぜ大塚家具は失敗したのか そのビジネスモデルは「家具屋」ではない (1/3ページ)

 なぜ大塚家具はビジネスモデルの変更に失敗したのか。東大在学中に起業し、現在年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は「非合理な意思決定をしても顧客の満足度は下がらない、ということを知るべきだ」という--。※本稿は、事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

 なぜ大塚家具は失敗したのか

 2015年以来、お家騒動が続き大きく業績を悪化させ、企業価値を毀損してしまった大塚家具。

 後継社長となった創業者・大塚勝久氏の娘である大塚久美子氏が志向したビジネスモデルの変更は、ざっくり言うと、高価格帯から中価格帯への変更と、会員制の廃止であった。

 私もかつて親に連れられて台場の大塚家具に行き、親が数十万円の家具を買う(買わされる)のを観察したことがあるが、販売員が最初から最後まで横について、いかに大塚家具の商品が素晴らしいかを力説しつつ営業するという仕組みであった。

 即ち、大塚家具の強みは、

  • 会員制によるプレミアム感の演出
  • 会員制を前提とした密着営業
  • 結果として高価格帯の家具が販売できる

 というビジネスモデルであった。

 つまり、大塚家具は「家具屋」というよりは「高級有形商材販売業」といったほうが適切なビジネスモデルであったわけである。

 大塚久美子氏は一橋大学経済学部を卒業した才媛であり、恐らく優秀であったことは想像されるが、本質的な意味でのビジネスモデルの理解があったかどうか、私としては疑問である。

 「まあまあ良くて、まあまあ安い」が一番ダメ

 結局、久美子氏が目指したのが、「ニトリよりは高いが、これまでの大塚家具よりは安い」という非常に中途半端なポジションであった。

 このような「真ん中です」のような立ち位置のビジネスで成功することはほとんどない。消費財を扱うビジネスにおいて、顧客に感じさせるバリューのポジションは、原則、「一番安くて、まあまあ良い」か「まあまあの値段だが、一番良い」の2種類しかないのである。

 これまで、大塚家具は、カッシーナのような超高級家具は別にして、いわゆる汎用家具のマーケットの中で「一番良い」位置にいた。実際に一番良いかは別として、とりあえずそういうことになっていたのである。

 そしてニトリが「一番安い」のポジションを取った。その状況の中で大塚家具が勝手に「安い」側に降り、「一番良いは誰かどうぞやってください」としてしまったわけである。しかし、「一番安い」という部分では圧倒的にニトリの方が「安い家具を作って売る」という部分で合理化されているため、同じ戦略で戦ったところで、家具を安く作る能力においては全く勝ち目がなかったのである。

 損をしても顧客満足度が下がるわけではない

 ビジネス本にはよく「相手に得をさせれば自分も得をする」という記述がある。これはもちろん真実の側面もあるが、一方でやや綺麗事に過ぎるようにも思う。

 というのは、営業の局面を想定すると、同じ商品、例えば新築一戸建てを6000万円で売るか7000万円で売るかによって、差額1000万円が会社側の利益になるか顧客側の利益になるかはゼロサムゲームだからである。

 つまり、個別の営業局面を想定した場合、当然ながら、なるべく相手に非合理な意思決定をさせ、会社がたくさん儲かるようにしたほうが有利なわけである。特に、取引の一回性が強いビジネスでは、リピートが想定されていないため、1人の顧客からなるべく多くの利益を搾り取るという方向性でビジネスを展開したほうが有利である。

 また、非合理な意思決定をしたからといって、顧客の満足度が下がるかというと実はそうでもない。家であれば、家を買う理由や、あるいは、営業マンが信頼できそうかどうか、といった定性的なファクターのほうが顧客の満足度に対する寄与度が高いと考えられる。

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