専欄

中国、コロナで優位性発揮も抱え込んだ新たな課題

 今回の新型コロナウイルス流行によって、世界の既存の体制は変化を迫られている。そのキーワードは「権威主義型」「密の回避」「巨大ネット化」の3つといえよう。一見すると、中国がいずれにおいても、アドバンテージを得ているように見えるが、果たしてそうだろうか。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 まず「権威主義型」についてだが、今年1月7日に、日本は1都3県を対象とした2度目の緊急事態宣言を、そして中国は石家荘市で厳しい都市封鎖をスタートさせた。両者を比較してみると、「権威主義型」の中国の方がより効果的だったことは、歴然としている。中国はいち早く経済活動を回復させており、国内総生産(GDP)が米国に追いつく時期も、従来の予測より数年早まりそうだ。

 しかし問題がないわけではない。米国が警戒心を一層強めており、両国の対立関係はますます先鋭化している。こうした対立が、今後中国経済に大きな影響を与える可能性がある。とにかく中国の輸出全体に占める日米欧の比率は、4割近くに達しているので、影響を最小限に抑えていかねばならない。

 2つ目の「密の回避」はどうか。東京やソウルの人口は、全国に対する比率が大きいが、北京の比率は極めて小さい。中国では都市が全国に分散しているので、感染の全国拡大を防いだといえるだろう。

 だが、都市と農村などの格差是正を中央政府に代わって、地方政府が担わねばならなくなってきた。特に農民工については、新型コロナによって一時期、数千万人もの失業者が出たともいわれ、多くはいまだに職場に復帰できず、農村に滞留している。地方政府が彼らを支援しなければならない。

 3つ目の「巨大ネット化」についても、中国の優位性が目立っている。例えば健康コードは一気に全国に普及する勢いであるし、テレワークの利用率も、中国では75%と日本などを大きく上回っている。

 一方で、課題も出てきた。ネット分野では民間企業への依存度が極めて高いことである。いまや民間企業はGDPの6割を占めており、中国のIT上場企業100社を見ても、ほとんどが民間企業だ。ところが中国政府はこのところ、民間企業への介入の度合いを強めており、その活力を奪いかねない。

 中国は新型コロナでアドバンテージを得たが、同時にいくつもの新たな課題も抱え込んでしまったようだ。

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