リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

他社が作れない感光材作り世界一 東洋合成工業・木村有仁社長(2-1) (1/2ページ)

 他社が作れない感光材作り世界一

 半導体製造に欠かせない感光材で世界シェアトップを誇る東洋合成工業。半導体の微細化・高機能化といった顧客が求める品質確保と安定供給に注力し、「他社が作れないものを作る」戦略が功を奏し、グローバルニッチトップ企業の地位を不動にした。常に時代の先を読むベンチャー精神は、創業家2代目の木村有仁社長に受け継がれており、「われわれの企業規模では数少ない機会を逃すわけにはいかない。常に先手を打ち、イノベーションを支える先駆けとなる」と陣頭指揮を執る。

 ベンチャー精神発揮

 --東洋合成工業の原点は

 「父が1954年に創業した。始まりは蒸留精製技術の取得で、父が日比谷図書館(東京都千代田区)でドイツの科学雑誌に載っていた論文をもとに、自前で蒸留塔を設計し設備を作り上げた。父は起きているときは仕事に没頭し、部屋には学術書や設計図などが山のように積まれていた。知的好奇心が旺盛で何事もやり抜く気概を持っており、常に探求していたという印象だ」

 --今では感光材メーカーとして欠かせない存在だ

 「70年代に入り2度のオイルショックで売り上げが激減し、一気にピンチに追い込まれた。これをチャンスととらえ、半導体回路形成に使用されるフォトレジスト用感光性化合物の基礎研究に着手した。当時は半導体の黎明(れいめい)期で『これから伸びるらしい』ということから『これに賭ける』ことにした。大手化学メーカーもこぞって参入したが、水の中でも燃焼するという危険性や少量多品種で生産管理が煩雑なうえ、半導体業界は常に品質と価格に厳しいとあって開発を断念する企業が相次いだ」

 「結果としてわれわれが残ったわけだが、企業規模からいって『人がやらないならやってやろう』というベンチャー精神が研究者に根付いていたからこそといえる。感光材は半導体が微細化する中で常に市場の最先端を歩み、今ではグローバルニッチトップに躍り出ることができた。当社を支える主力事業だ。『時代に必要とされるものを作る』『研究開発と技術を核にする』『諦めず、愚直に、誠実にやる』といった経営ポリシーのたまものといえる」

 DX化進み需要急増

 --新型コロナウイルスが流行する中で業績は

 「2021年3月期は売上高271億6400万円(前期比11%増)、経常利益29億8200万円(45%増)と増収増益だった。半導体など電子材料業界は、コロナ禍にあってDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に加え、リモートワークの普及、パソコン需要の増加などにより需要がすごい勢いで伸びている。売り上げの6割を占める感光材だけでなく、化成品や物流事業など全てで収益は増加した」

 --この勢いは当面続くのか

 「今後も伸びる余地は十分にあると考えており、22年3月期は売上高300億円(11%増)、経常利益34億円(14%増)を予想している。23年3月期を最終とする5カ年中期計画『TGC300』の数値計画(売上高300億円以上、経常利益30億円以上、売上高経常利益率10%以上)も前倒しで達成できるとみている」

 「というのも、TGC300策定時と今の事業環境は全く異なるからだ。DX化はさらに加速し、米中対立や世界的な半導体不足も続く。半導体メーカーは増産に乗り出しており、感光材市場も大きくなる。われわれも供給を加速的に増やす体制づくりに取り組んでいる。今期中に次期中期計画を策定することになるが、半導体需要の加速という上積み分を盛り込む。ライバルより技術優位性があるので勝ち残れると自負しており、それだけアグレッシブな計画になる」

 品質と生産性両立しダントツ経営

 --半導体業界から支持される強さの秘訣(ひけつ)は

 「最先端回路の線幅はナノ(10億分の1)メートルレベルで、そこで使われる感光材も高純度が求められ、それだけ品質管理も厳格でなければならない。そのため問題が発生すると原料から最終製品まで、さらに機械や製法、携わった人も過去履歴を集めてデータを徹底的に解析し原因を洗い出す」

 「ただ先端材料は品種が極めて高度化し、かつ少量多品種なので人の感覚だけで洗い出すことは難しいためデジタル化を進めている。意思決定のサポートとしてAI(人工知能)を導入したり、RPA(ロボットによる業務自動化)も取り入れたりしていく」

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