海外情勢

フィリピンが海上民兵配備で迷走 大統領が凍結方針、対中刺激回避か

 フィリピン政府が、南シナ海で警戒・監視活動に当たる非武装の「海上民兵」配備計画をめぐって迷走している。海軍が計画を公表して間もなく、ドゥテルテ大統領が資金不足を理由に当面凍結する方針を表明した。南シナ海で共同資源探査をする可能性がある中国に対し、過度の刺激を避けたい思惑がありそうだ。

 漁師護衛へ組織化

 フィリピンの民兵は軍を補完する位置付け。陸軍の民兵は大半が農民で月の半分のみを訓練に費やす。海上民兵は漁師を組織化して洋上警備に当たらせる構想で、銃器は所持せず衛星電話と追跡装置のみを携帯。漁師の護衛も受け持つ。

 海軍幹部は上院で2020年10月12日、まず240人を海上民兵として採用する方針を明らかにした。配備地域は西部パラワン島沖や、北部ルソン島沖の排他的経済水域(EEZ)内にあるスカボロー礁(中国名・黄岩島)周辺を想定。同礁は12年に中国が実効支配を始め、フィリピン海軍によると、周辺には現在も中国海警局の艦船と漁船が停泊している。

 中国側はフィリピン人漁師が設置した集魚装置を押収するなどの妨害をしたこともあるという。海上民兵は漁師が嫌がらせを受けないための「抑止手段」のはずだった。

 予算不足で難色

 ところが計画公表からわずか11日後、ロレンザーナ国防相が手のひらを返した。ドゥテルテ氏が「予算がないから当面やめておこう」と難色を示したと明かし、自身も「大型船舶の調達に費用がかさむ」と同調した。

 反対論は一気に広がった。エスペロン大統領顧問(安全保障担当)は、配備は挑発的で中国に誤解を与えかねないと懸念。海軍出身のトリリヤネス元上院議員も「戦争の引き金を引くような誤った判断につながる」と主張した。

 計画凍結の背景には、南シナ海での資源探査があるとみられる。エネルギー省は海軍が計画を公表した3日後、ドゥテルテ氏がパラワン島沖の3つの鉱区で資源探査の再開を認めたと発表した。

 ドゥテルテ氏と習近平国家主席は19年8月の会談で、海洋資源の共同開発に向けた取り組みを加速させることで一致しており、中国と歩調を合わせた探査事業が具体化する可能性がある。

 中国の海上民兵について、フィリピン紙は人民解放軍を支援する「トロール漁船に乗った隠密部隊」と表現。数百隻がフィリピン領海内に待機していると伝えた。

 中国に対する態度が一貫しないドゥテルテ氏。経済協力か、領有権主張か。その時々の優先事項によって強気と弱気の振り子状態となり、外交は依然、予測不能だ。(マニラ 共同)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus