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あのインテルも苦境…半導体業界の激変が日本にとってチャンスである理由 (1/2ページ)

 DXの波に台頭した台湾のファウンドリー

 コロナショックの発生によって、世界経済の環境変化のスピードが加速している。米携帯電話大手ベライゾン・コミュニケーションズのトップのハンス・ベストベリ氏が「コロナショックによって世界経済のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は5~7年前倒しされた」と指摘するほど、そのインパクトは大きい。

 そうした状況下、世界の半導体業界では台湾のファウンドリー(半導体受託生産会社)であるTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)の影響力が一段と高まっている。世界のIT、自動車など多くの企業が、世界最大手のTSMCの生産ラインを取り合い半導体の需給逼迫(ひっぱく)は鮮明だ。

 世界の半導体業界が重大な構造変化に直面する中、わが国の企業は微細かつ高純度の半導体関連部材や、IT機器から社会インフラまで幅広く使われるパワー半導体(電力の供給とコントロールを司る電子部品)の分野で強みを発揮している。最先端(回路線幅5ナノメートル)の半導体生産に不可欠なEUV(極端紫外線)フォトレジスト(感光材)やその原料の分野で世界的なシェアを持つ本邦企業は多い。

 今後、IT関連の投資は世界各国で増加し、半導体需要も増勢を維持するだろう。動線を前提としない経済活動を支える大手ITプラットフォーマー不在のわが国にとって、半導体関連の部材、製造装置(精密機械)、およびパワー半導体関連企業の競争力は、中長期的な経済の安定に無視できない影響を与えるだろう。それに加えて、高い製造技術と新しい発想の結合を目指す企業が増えることが、中長期的なわが国経済の展開に無視できない影響を与えるはずだ。

 生産委託が加速する半導体業界

 スマートフォンの創造やSNSをはじめとするプラットフォーマーの出現と成長は、米国をはじめ各国の経済成長に無視できない影響を与えた。IT先端技術の活用はデータの重要性を高め、DRAMなどのメモリや中央演算装置(CPU)への需要が高まった。世界の半導体業界では、いち早く、より多くの需要を取り込もうと競争が激化した。その中で変化にいち早く対応し、影響力を発揮しているのがファウンドリー最大手のTSMCだ。

 端的に言えば、アップルのiPhoneのヒットのインパクトは大きかった。アップルは、生産工場を持たない“ファブレス”のビジネスモデルを確立し、ソフトウエアなどの設計と開発に注力し、生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンに委託した。それによって、アップルは設備投資の負担を軽減し、より短期間での新しい製品やサービスの創出を目指した。

 その結果、半導体業界ではファウンドリー企業の重要性が一段と高まった。特に、TSMCは最先端から旧式の半導体までを総合的に生産する体制を確立した。それが、米半導体のAMD、NVIDIA、さらにはアップルなどからの生産委託を獲得し、半導体業界における設計・開発と生産の分離が加速した。

 かつて世界を席巻したインテルも…

 他方、1990年代から2000年代初めにかけて米マイクロソフトのシステムを支えるCPU(中央演算装置)メーカーとして世界を席巻した米インテルは変化への対応が遅れた。同社は設計・開発・生産までを自社で手掛ける“垂直統合”のビジネスモデルにこだわった。その分、インテルがTSMCと同程度のスピードでチップの回路線幅を細くする“微細化”への取り組みを進めることは難しかった。

 2020年7月、インテルのボブ・スワンCEOは外部への生産委託を検討していると述べた。それを見た世界の投資家は、かつて隆盛を誇ったインテルが、垂直統合の体制が環境変化にうまく対応できていないとの見方を強めた。

 両社の株価推移を確認すると、2012年半ば以降、TSMCの株価上昇が鮮明だ。投資家は、世界の半導体産業の主導権がインテルから台湾のTSMCにシフトし始めたと考えている。ある意味では、世界の半導体業界における生殺与奪の権が、インテルからTSMCに移りつつあるように見える。

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