海外情勢

コロナ最前線で“ワクチン不信” 接種拒否に米政府苦慮、大企業も支援へ

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する米国で、医療従事者の多くがワクチン接種の受け入れを拒否し、接種が遅々として進んでいない。政府はくじ引きでの景品提供やピザパーティー開催などを提案。労働現場での接種促進に向け、大手企業も支援に乗り出した。

 交流サイト使い称賛

 パンデミック(世界的大流行)を終息させる可能性を持つワクチンに拒否反応を示しているのは、ソーシャルメディア上で根拠のない理論を展開する反ワクチン活動家だけではない。看護師や消防士なども、過去最速で使用が認められたワクチンの安全性に疑問を投げ掛けている。

 全米有数の規模で民営の高齢者福祉施設を展開するプルイットヘルス(ジョージア州)のニール・プルイット・ジュニア最高経営責任者(CEO)は、「『なぜ私が真っ先に投与されなければならないのか』という声が上がっている。『実験台』との言葉も聞かれる」と話す。

 米ファイザーとドイツのビオンテック、米モデルナはいずれも、自社で手掛けた新型コロナワクチンが安全であり、研究や各種手続き、生産の計画に関してかつてないほどの情報を開示してきたと説明している。それでも、非営利団体カイザー・ファミリー財団の調査では、共和党員や黒人、農村部を中心に27%がワクチンを全く望んでいないと回答した。

 一部の医療従事者は、短期的な副反応あるいは長期的な未知の危険性を挙げてワクチン接種に反対している。日々の業務で科学に関わる人々の間でさえ、虚偽情報や陰謀論的な疑いがまかり通っている。

 スタテン島南岸在住の救急医療隊員のジョナサン・ダマトさん(41)は昨年12月にワクチン接種の優先対象者となったが、これを断った。ダマトさんはインタビューで「開発者はマウスを用いた実験を省略した」と話し、異例の開発スピードへの懸念を示した。

 実際には7万3000人を超える人以外にも、マウスやサルへの投与試験を実施済みだ。また接種により、広範囲にわたって被害が出ている兆候はない。米疾病対策センター(CDC)は深刻な副反応が生じる確率を0.001%としている。

 一部の開発者は懸念払拭のため、積極的な情報公開に努めている。モデルナは「ワクチンの信頼性の向上」に向けて、リスク群の分類や治験結果のデータを公開した。同社の広報担当のレイ・ジョーダン氏は「当社は参加者の関心の高さを受け、治験プロトコル(実施計画書)の全容を公開した」と説明した。

 フロリダ州タンパの小児科医で、ワクチン接種の信頼感醸成を目指す「ワクチン検討プロジェクト(VCP)」でアドバイザーを務めるデビッド・バーガー氏によると、ワクチンの長所と短所を比較検討したい場合でも、データと透明性の欠如のためにそれができない現状がある。そのため、「開発者と規制当局はさらに多くの情報を開示すべきだ」と主張する。

 CDCは昨年12月、長期療養施設の管理者が職員に接種するよう説得するのに役立つ「コンフィデンス・チェックリスト」を発表した。CDCは接種した人をソーシャルメディア上で称賛することや、接種を広げるためにピザパーティーを開催したり景品を渡したりすることを提案している。

 プルイットヘルスのプルイットCEOによると、同社では1万6000人の職員の半数がこれまでに接種する予定だったが、実際には25%程度にとどまっている。

 接種に乗り気でない職員に10ドル(約1040円)のギフト券や、アップルの「iPad(アイパッド)」が当たる抽選券などを提供。上級スタッフのほか、牧師まで駆り出して説得に当たっているという。

 プルイット氏は「人々を説得できれば、はるかに良い結果が得られるだろう。人口の70%に接種させる目標を達成するためには自発的な行動が必要だ」と指摘した。

 アマゾン施設で投与

 こうした中、大手企業もワクチン接種の支援に名乗りを挙げた。インターネット通販大手アマゾン・コムの小売り部門のデーブ・クラーク次期最高経営責任者(CEO)は20日、バイデン大統領とハリス副大統領宛ての書簡で新政権でのワクチン接種計画への支援を申し出た。

 アマゾンは先月、国内80万人超の同社従業員のうち最前線で働く労働者への迅速なワクチン接種をCDCに求めていたが、書簡で要求を繰り返した上で、「当社の事業や情報技術、コミュニケーション能力、専門知識を駆使し、新政権のワクチン接種への取り組みを支援する用意がある」と説明した。

 アマゾン本社やオフィスで働くホワイトカラー層の大半は在宅勤務だが、倉庫やクラウドコンピューティングのデータセンター、傘下のスーパー、ホールフーズ・マーケットの店舗は新型コロナのパンデミック中も営業している。

 アマゾンは自社施設でワクチン投与を行うことで医療機関と契約しており、「ワクチンが入手可能になり次第、迅速に接種を開始する用意がある」と表明した。(ブルームバーグ Elise Young、Spencer Soper)

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