海外情勢

中国回復指標“ゆがみ”警戒 専門家「前年比はペースかさ上げ」

 中国経済の専門家の間に、回復の動きが誤って反映される「経済統計のゆがみ」を警戒する声が出ている。中国の経済指標は今春、2020年の記録的な落ち込みを受けたベース効果で前年比の上昇率が押し上げられているためだ。

 前月や19年と比較

 中国は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大への対応で世界に先駆けてロックダウン(都市封鎖)を実施した。歴史的な落ち込みとなった20年1~3月期から今年は一変、ベース効果で前年比の数字が激しく動いている。

 米調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、フライヤ・ビーミッシュ氏は「安全ベルトを締めろ、というのが最善のアドバイスだ。前年比の数字は物事がどう進んでいるかについてほとんど教えてくれそうにない」と話す。

 エコノミストらは前年比に代わる比較対照が必要だとして、中国の経済回復ペースをかさ上げする前年比ではなく前月や19年の実績を利用する動きが出ている。英銀スタンダード・チャータードの大中華圏担当チーフエコノミスト、丁爽氏(香港在勤)は、前月や前四半期と比較したり、19年を基準としてそれ以降2年間の平均成長率を算出したりする手法が増えるとみている。

 英国の独立系マクロ経済調査機関アブソリュート・ストラテジー・リサーチのアダム・ウォルフ氏(ロンドン在勤)は、今年の年初2カ月の工業生産が20年12月の水準を維持したとしても、昨年2月の工場閉鎖によるベース効果で、年率換算の伸び率は25%になると分析する。

 注目される大型指標は4月16日に発表予定の1~3月期国内総生産(GDP)だ。ブルームバーグによるエコノミスト調査では、前年比で過去最高の18.1%増となる可能性がある。ウォルフ氏は「春節の休暇の移動について現行の規制があっても、20%を上回るケースを除外できない」と話す。

 支援策撤回リスク

 輸送関連のデータや自動車販売台数、映画興行収入といった発表頻度が高いハイフリークエンシー指標の有用性も明らかになりそうだ。

 もっとも、中国が新型コロナを迅速に押さえ込んだことで、3月以降の四半期ベースの統計データにおけるベース効果は薄れるが、年間成長率への影響は残る。国際金融協会(IIF)によると、GDPが21年いっぱい20年10~12月期と同水準を維持した場合、中国経済は通年で平均6.6%成長を記録することになる。

 IIFのチーフエコノミスト、ロビン・ブルックス氏は「4~6月期に成長が縮小した他の大半の国々とは異なり、中国で新型コロナの感染が拡大したのは20年1~3月期だった。中国GDPはその後20年を通じて急上昇をたどっており、統計上のキャリーオーバー効果は非常に高いということになる」と話す。

 一方、統計データは、自国経済が過熱する兆候を注視する傾向のある中国の政策担当者に難題をもたらすことになる。世界銀行は、時期尚早に支援策を撤回することが、今年の中国の回復における最大級のリスクになると警戒している。

 カナダに本拠を置く独立系の投資調査会社アルペン・マクロの中国担当チーフストラテジスト、ヤン・ワン氏は「昨年の極端に落ち込んだ低いベースが必然的に今年のマクロの数字を極めて強く見せることになるが、必ずしも中国経済が過熱しているわけではない」と牽制(けんせい)している。(ブルームバーグ Tom Hancock)

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