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「空き家」激増…全国で利活用が拡大 シェアハウス転用、バンク後押し

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「空き家」激増…全国で利活用が拡大 シェアハウス転用、バンク後押し

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全国の空き家の数と空き家率  全国で増え続ける空き家の利活用を促す動きが広がってきた。一戸建ての空き家などを部屋ごとに貸して複数の人たちが共同で生活する「シェアハウス」に転用する動きのほか、国家戦略特区による規制緩和を活用してアパートなど賃貸住宅の空き物件を訪日外国人客ら旅行者の宿泊場所として紹介する新サービスも始まる。人口減少に悩む自治体では、主に地域外の利用希望者に空き家を紹介する「空き家バンク」で後押しする。空き家の増加は地方だけでなく都市部でも深刻な問題となっており、利活用の取り組みで歯止めをかける必要がある。

 13年「800万戸超」

 東京メトロ丸ノ内線の南阿佐ケ谷駅から5分ほど歩くと、閑静な住宅街の一角に築四十数年を経た2階建ての民家が見えてくる。一戸建ての空き家を活用して、2011年10月にシェアハウスとしてオープンした「プリエ阿佐ケ谷」だ。

 所有者は老夫婦だが、都内の高齢者向け住宅に転居。空き家となっていたのを不動産関連会社が一括で借り上げ、シェアハウスの運営に乗り出した。洋室と和室の計5部屋があり、現在は30~60代の独身男女4人に部屋貸ししている。

 シェアハウスの利点について、日本シェアハウス協会の山本久雄代表理事は「入居者は一般の賃貸住宅に比べて経済的な負担が軽くて済む。一方、持ち主も毎月安定した家賃収入が得られる」と強調する。

 空き家は増加の一途をたどっている。5年ごとに行われている総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家の数は08年に757万戸と、03年から約15%増加。総住宅数に占める空き家の割合を示す空き家率も1998年に初めて1割を超え、2008年には13.1%に上昇した。今月下旬に発表される13年時点の調査では空き家は800万戸を超えているとみられる。

 宿泊サイト運営の「とまれる」(東京)は不動産仲介のエイブルと組み、訪日外国人客ら旅行者が賃貸住宅の空き物件に泊まれるよう、旅行者と物件所有者を予約サイトで結ぶ新サービスを今秋にも始める。旅館業法の適用が除外される国家戦略特区の規制緩和を活用。日本の生活を体験したい訪日客の希望に応えるとともに、空き物件の有効活用で所有者の収益機会も増えるとにらむ。15年3月末までに3000件の物件登録を目指す。

 バンクで人口減対策

 一方、人口減少に悩む自治体では、空き家バンクの設置が中心となってきた。東京から長野新幹線で1時間余りの長野県佐久市は、首都圏など都市部の住民との交流や県外からの移住を促す目的で、08年度に空き家バンクを開設。賃貸や売却が可能な一戸建ての空き家を物件所有者に登録してもらい、地元不動産業者と連携しながら利用希望者に紹介している。

 同市では13年度までの6年間で累計254件が成約しており、14年版の土地白書では「全国有数の契約成立数の高さ」と紹介された。

 空き家バンクを設ける自治体は全国で500近くはあるとされるが、同市のような成功例ばかりではなく、物件登録数や成約数は、まちまちなのが実情。同市の担当者が「利用希望者の要望に応えるには物件登録数を確保する必要があり、空き家の調査を行う中で物件所有者に空き家バンクへの登録を働きかけている」と語るように、自発的な取り組みは不可欠だ。

 国土交通省も、空き家となっている一戸建てなどの住宅を賃貸流通に仕向けようと、所有者が修繕を行わないで市場相場よりも安く賃貸して、入居者が自己負担で修繕や自分の好みの模様替えを行うタイプの賃貸借契約の指針を3月に策定した。

 同省によると、08年時点で757万戸ある空き家のうち、一戸建てなどの個人住宅が約35%の268万戸を占める。「空き家の所有者には他人に賃貸するという選択肢があり、入居者には新しい賃借のやり方があるということを知ってもらうことで、双方の潜在的なニーズに働きかける」(同省住宅総合整備課)と指針の狙いを説明する。

 空き家問題に詳しい富士通総研の米山秀隆上席主任研究員は「住宅ローン減税などで、新築よりも中古を買ったほうが手厚くなるようにするなど、金銭的な後押しがあると効果的だ」と提言する。(森田晶宏)

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