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【広報エキスパート】三菱重工業 広報部長・齊藤啓介氏

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【広報エキスパート】三菱重工業 広報部長・齊藤啓介氏

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 ■グローバル化で変革進める

 --昨年6月に独シーメンスと連合して仏アルストムのエネルギーインフラ部門買収を提案しましたが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)との争奪戦で敗れました。このときの広報活動は

 会見の3日前の朝、広報部員にパリ行きを命じ、夕刻には飛び立ってもらいました。M&A(企業の合併・買収)では、法務、会計、広報の体制を整える必要がありますが、広報部としては現地のPR会社を通じて欧州メディアの動向などを把握し、シーメンスとともに仏メディア、グローバルメディア、日本メディアのパリ支局などに会見予定の連絡を入れ、準備を整えました。当日はシーメンスと当社のCEO(最高経営責任者)が出席し、新聞、テレビなど約100人が集まりました。これほどの規模の記者会見を海外で行ったのは初めてでした。争奪戦の行方が流動的だったうえ、時差がある中、現地と東京でメールや電話での連絡を密にしながら、想定問答集を作成しました。現地でなければ分からないこともありましたので、現地スタッフに任せた部分も多くありました。当社としては概ね伝えたいことは伝えられたと思っています。

 国内のメディアには、同時刻に英文のニュースリリースを開示しましたが、言葉の問題とビジネスそのものを理解していないと、記事を書きにくかったのではないかと思い、その点の改善が課題として残りました。

 --事業が広がり、広報活動も大きく変わってきたのでは

 ここ数年は多くのメディアで取り上げられ、積極的に情報発信に取り組んでいます。また、着実にグローバル化が進む中で広報の改革を進めています。一例ですが、2012年までは事業所ごとに社内報を発行していました。事業所、事業部門が個別に力を発揮することで、事業の発展に貢献してきたからです。しかし、グローバル化を目指す今、グループ社員が一丸となってその強みとシナジーを発揮し、地球規模の課題解決に挑戦していくことが急務となっています。そこで約8万人のグループ社員が同一の情報を共有できるグループ内コミュニケーションツールとして、グループ報「Global Arch」の発行に切り替えました。

 日本語と英語の2カ国語版を同時に発行し、世界中の社員へグループ内の動き、トップの思い、仲間の情熱、仕事のヒントになる情報などを発信。グループの一員として働くことに誇りを持てるような情報ツールになることを目指しています。

 社外向け広報も日本語と英語での発表はもちろん、中東地域向けのアラビア語、中国語、ベトナム語など発表の対象案件ごとに現地語でリリースを発信。関連地域のマスコミや現地拠点のウェブサイトなどを通じて、一般の方にも読んでもらえるよう工夫しています。

 --5月に発表した中期経営計画「2015事業計画」でも「更なるグローバル化」がうたわれていますが、広報はどういった姿を目指していくのですか

 当社は海外での知名度が低く、三菱重工業(MHI)グループとしてのブランド再構築が必要だと考えています。まずは事業計画で発表した当社グループが目指す企業像を社員を含めたステークホルダーの皆さんに浸透させることで、海外での事業環境を整えるとともにPMI(Post Merger Integration、経営統合)の促進にもつなげていきたいと考えています。

 各事業の直接的なPRも強化する必要があります。ターゲット地域の文化言語を尊重し、適切なメディアを選択することでお客さま、特に潜在的なお客さまをターゲットにしたカスタムメードの広報活動を行っていきたいと思います。

 “郷に入っては郷に従う”ことで独り善がりな対応にならないよう、実施に当たってはその地域に精通した海外のPR会社も積極的に活用していきたいと思います。広報に必要なのは、リスペクトの精神と柔軟性、バランス、スピードだと思っています。今後も公平な情報開示と誠実な対応を基本としながら一人一人の記者の皆さんとネットワークを大切にし、当社の理解促進に努めていきたいと思っています。(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子)

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【プロフィル】齊藤啓介

 さいとう・けいすけ 1981年一橋大経卒。三菱重工業入社。原動機事業本部総務部長などを経て、2013年横浜製作所長。14年から現職。

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