電子書籍の将来は? 京極夏彦さん「紙のまねしないのが大事」
2011.12.26 11:00更新
電子と紙の書籍は共存できるのか、電子書籍市場の将来は-。昨年と今年、『死ねばいいのに』と『ルー=ガルー2』(いずれも講談社)の小説2作品を紙と電子双方で発表した作家の京極夏彦さん(48)に思いを聞いた。
「以前、文庫を1冊本と分冊本で同時発売した時、『分冊が売れて、厚い1冊本は売れないのでは』という意見があったが、売れ行きは変わらなかった。持ち運びに便利だけれど、全部買うと若干割高になる分冊本と、若干安いけれど厚い分持ちにくい1冊本ではニーズが異なるからだ。同じ文庫ユーザーでもこれだけ違うのだから、ハードカバーの単行本はもっと違うし、電子書籍はさらに違う。販路が多いほうが売れるわけで、(紙と電子の)同時発売があり得ないということはない」
「『死ねばいいのに』は、(多機能端末)iPad(アイパッド)の発売と合わせ電子書籍を配信したので、(話題性もあって)確実にハードカバーの売れ行きが伸びた。電子書籍が出たことで紙の本が売れなくなったことはない」
「日本の出版には何百年という歴史があり、本という娯楽装置はほぼ最終形。電子書籍は(文章)素材の見せ方が分からないまま見切り発車している。いわば、料理の仕方すら分からず出しているものが、熟練のシェフ(編集者)が作った料理(本)に影響を与えるわけがない。出版不況の理由を電子書籍に求めるのはナンセンスだ」
「今のところ暗い。主導権を配信元のアップルやグーグル、アマゾンの米企業が握っているからだ。太刀打ちする力を日本の出版社は持ち得ない。このままでは出版社はただの中継ぎ業者になってしまう。出版社が頑張って、経済的、文化的に日本の出版文化を守る必要がある」
「考えられる。ただ、小説は書いただけでは誰も読まない。(紙の本の場合)装丁され、本という商品になって流通しないと完成しない。紙の質からインク、活字の種類に至るまで目配せの効いた商品のほうがいいに決まっている。それは編集者の仕事。出版社はソフトを作る上で『自分たちが必要なんだ』という自覚をしっかり持ってほしい」
「紙の本のまねをしないことが大事だ。昨年の段階では勘違いの人が結構いて、『紙の本の質感そのままです』といっていたが、それなら紙の本を買えばいい。縦組みがいいのか横組みか、背景の色はどうするのかなど検討部分は山ほどある。どう読ませるかが大事で、文章の読みやすさを含めた見せ方を考えていかないといけない」
「要請があれば、電子書籍に特化した作品を書いてみたい。例えば、同じ文章でも、漢字検定3級、4級と級ごとに漢字の量が変わるとか(笑)。こういう紙の本では絶対できないアイデアがいくつか出てきて、『書いてください』といわれたらやる気が出る」