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二人をつなぐ愛のレール「婚活トレイン」 アラサー女性記者が秘訣探る

2012.5.16 17:00更新

【PM6:55カップル成立】帰りの電車の車内。めでたく両思いになった2人、会話も弾む

 結婚願望はあるけれど、相手がいない。そんな人が男女ともに増加している。昨年11月、国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第14回出生動向基本調査・独身者調査」によれば、交際相手のいない独身男性は61.4%、女性は49.5%と過去最高で、年々増加傾向にある。その一方で、男性の86.3%、女性の89.4%が結婚願望を持っているという。

 そんな背景から、“就活”ならぬ、結婚活動すなわち「婚活」という言葉が生まれ、あっという間に普及した。出会いの場を提供する婚活イベントは行政から民間まで広く各地で盛況だ。中でも、近畿日本鉄道主催の「婚活トレイン」は、参加者の約2割がカップルになるという、縁起のいいイベント。人気らしい。見知らぬ男女をいかに、両思いへと導くのか。その秘訣(ひけつ)を探ろうと、アラサー記者が同行取材しました。

 午前9時10分、大阪上本町駅発、賢島行き特急電車に乗りこんだ。

 1両を貸し切りにしており、参加者は座席数ぴったりの男女各26人ずつ。男性は40代が多く、女性は30代後半が多い印象だった。

 大半は1人で参加しているらしい。乗り込んだあとはうつむいたまま無言。緊張した雰囲気のまま列車は出発した。不安になっていると、「みなさーん、お待たせしました!自己紹介タイムでーす」。底抜けに明るい司会の声。近畿日本鉄道上本町営業所勤務の松田艶樹さん(38)だ。ふだんは近鉄社員、婚活トレインが走るときには名司会役としてイベントを盛り上げているという。

 参加者たちは顔を真っ赤にしながら自己紹介。「料理は…卵焼きぐらいしか…」と恥ずかしそうな女性には「卵焼きが作れたら十分。男心をつかみますよ」と松田さんの助け舟。女性も笑顔、参加者も笑顔。いい感じになってきた。

 個性も見え隠れ

 午前11時、鳥羽駅に到着。歩道橋を渡ればそこはミキモト真珠島だ。

 おなかがすいたのでまずは昼食。アコヤ貝の貝柱などおいしい魚介に舌鼓。おなかが満たされると、口もなめらかになったようで、おしゃべりに花が咲く。

 食後は「連想ゲーム」。向かい合わせに座り、「赤い果物といえば?」「イチゴ!」など思いつくまま答える。1分間ごとに相手を交代し全員とあたる。記者も参加させてもらった。

 まずは「よろしくお願いします」と握手。ぎゅうと握りしめる人もいれば、目を見ながら両手を差し出す人も。なんとなく個性が見える。

 「花見といえば?」と聞かれ私はすかさず「ビール!」。すると向かいの男性が、「えっ、女子ならだんごでしょ」とばっさり。会話は続かず。同じ答えをした隣の女性は「お酒、お好きなんですか」と返され、話が弾んでいた。1分でも相性はわかる。

 その後も、海女さんの実演を見たり、パールを使ったストラップ作り、クイズラリーなど、楽しみながら相性を探る催しが続く。3回目の参加となる“常連客”の男性は、「値段もお手頃だし、旅行気分で楽しい」。なるほど…。

 吉野町長が発案

 婚活トレイン、正式名称は「きんてつ Happy Train」という。きっかけは奈良県吉野町の北岡篤町長のひらめきだった。

 吉野町は、高齢化、人口減少といった課題を抱えていた。町内に残った若者も独身者が多い。にぎわいを取り戻すには観光施策か。思案していた北岡町長は、山積する課題が1本の線でつながることに気が付いた。「町外から若い人が来て、観光しながら仲良くなってもらえるような出会いのイベントはどうだろう」

 地元を走る近鉄に協力を求めたところ、「やりましょう」。ちょうど近鉄も乗客数を増やすため、沿線ツアーを次々と企画しており、新しい素材を探していた。こうして21年12月、婚活トレインが初運行した。今回で通算8回目だ。

 「勝利の方程式」

 午後3時半。イベントの山場、フリートークタイムを迎えた。2人きりで話せる場所が用意されている。

 ここでも松田さんたち助っ人の出番だ。「気になるお相手はいませんか」。こまめに参加者に声をかける。もじもじしていた男性には「話をしないと分からないですよ。頑張って」と激励。「世話を焼けば焼くほどカップル数が増えるんです」。松田さんが編み出した「勝利の方程式」だ。

 午後6時45分。車内で結果が発表された。両思いとなったカップルは、過去最高の8組。参加者の3分の1が相手にめぐりあえたことになる。思いが通じたカップルも幸せそうだったが、松田さんたち社員の表情もまた、輝いていた。

 「寺社コン」も人気

 “官製”婚活イベントの先駆けとされているのが奈良県。出生率が全国ワースト2だった奈良県では、平成17年、出生率の上昇につなげようと、出会いの場を提供する「なら出会いセンター」を開設。パーティーなど婚活イベントの企画と情報発信に乗り出した。入会金不要で参加料も安く設定、お堅いイメージから安心感もあり、たちまち人気に。

 秋田、栃木、茨城、兵庫、岡山、広島、福岡、大分など全国各地に同様のプロジェクトがあるがいずれも盛況だ。

 今年3月、大阪府森林組合南河内支店(大阪府河内長野市)主催のバーベキュー婚活イベントでは、男女各30人の定員に対して6倍を超える応募。一昨年の夏に岡山市が主催した、「瀬戸内海に浮かぶ離島で鬼ごっこ」という変わり種の企画には、全国から応募が殺到。このほか、各地の寺院が「寺社コン」を開いており、写経を通じた婚活イベントなどは「字に性格が表れる」と人気だという。(社会部 栗井裕美子)

 

 「草食系男女のデビューには最適」

 あっという間に20代がすぎ、三十路に突入した記者。自分の婚活にも役立てばとちょっと緊張しながら参加した。みなさんも最初は堅い表情。親が申し込んだとか、異性とほとんど話したことがないという人もいたようだ。しかし、気付けばみんなで和気あいあいと楽しんでいた。

 電車に乗って観光スポットをめぐり、必然的に長い時間を一緒に過ごす。そこへ近鉄社員の抜群のフォローのおかげで、うち解けていく。草食系の男女のデビューの場としては最適かもしれない。「婚活」というと、相手を見つけなきゃと力みがち。その点、こういうイベントに上手に参加して、楽しんでいるうちによい人に巡り会える、というのは理想的かも。

 取材後、友達から「婚活トレインに行ったのに、真面目に仕事だけをするなんてもったいない」としかられた。でも、いろいろと勉強になった。そろそろ私も婚活デビューしようかな。面白い体験をしたら、また報告します。

 産経新聞大阪編集局では、選りすぐりのアラサー女性記者たちによって今の日本の「いいもの」「素敵なひと」を女子目線でレポートします。

【プロフィル】栗井裕美子(くりい・ゆみこ) 平成18年入社。奈良支局を経て、22年7月から大阪府富田林市に拠点を置いて、南河内地域を担当。昨年12月にシドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんを取材。Qちゃんスマイルに感化されマラソンを始めた。目標は大阪国際女子マラソン、ハーフ部門での完走。

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