SankeiBiz for mobile

“中国頼み”ハリウッドのトランスフォーム 映画最新作で最大限配慮

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

“中国頼み”ハリウッドのトランスフォーム 映画最新作で最大限配慮

更新

 人気SFアクション米映画「トランスフォーマー」シリーズの最新作「トランスフォーマー/ロストエイジ」が27日、米国と中国で封切られた。日本公開は8月8日。過去のシリーズ3作は全世界で計27億ドル(約2740億円)を超える大ヒットを記録。今回もどこまで興行収入を伸ばすか注目されているが、第4作は画面に中国的な要素がふんだんに登場し、中国の観客を引き付けるために最大限の配慮がなされているのが特徴だ。今や中国は世界第2の映画市場となっており、ハリウッドも“中国頼み”に傾いていることが顕著に表れた形だ。

 公的支援受けて制作

 「トランスフォーマー」は日本の玩具メーカー、タカラトミーが1980年代から展開している変形ロボット玩具をモチーフにした実写映画で、自動車や飛行機、ブルドーザーなど、何にでもトランスフォーム(変身)できる宇宙からやってきた金属生命体の集団が、地球側に味方する善と、その逆の悪の集団に分かれ、地球上で激しい闘いを繰り広げるという物語。

 1作目は2007年、2作目は09年、3作目は11年に公開され、特に3作目は中国での興収が約1億4500万ドル(約147億円)と1億ドルの大台を突破したこともあり、全世界で11億2400万ドル(約1140億円)と桁違いの興収をあげた。

 配給元のパラマウント・ピクチャーズは、マーク・ウォールバーグさん(43)主演、マイケル・ベイ監督(49)の4作目では、中国当局の公的な支援を受けて制作する戦略を取った。中国国営の中国電影頻道(チャイナ・ムービー・チャンネル)と提携し、さらに中国企業からも支援を受けて、いわば「米中合作」とすることで中国市場への参入をよりスムーズにする選択をした。

 中国政府は自国の映画産業を保護するため、外国映画の上映を本数、場所ともに制限しており、興収の約25%しか映画会社に渡さないようにしているためだ。ただ、「合作」ということになれば、こうした制限をかなり免れるが、代償も伴う。脚本が中国当局の検閲を通らなければならないほか、中国の俳優や風景を映画にふんだんに取り入れる必要が生じる。

 公開中止騒動も

 今回、映画に出演する俳優のうち4人は、何百万人もが視聴する中国のリアリティー番組で選ばれた。主舞台の一つに香港が設定され、映画クルーは北京にも何週間も滞在して撮影。ファンたちによる俳優の目撃情報は中国版ツイッター「微博」をにぎわせた。

 さらに映像には、西安市内にある公園や中国風建築、大手飲料メーカーの中国版ポスター、タクシーが行き交う街並みなど、中国的な要素がたっぷり盛り込まれた。

 公開直前の21日には、映画制作に出資した中国の開発業者が、自社の所有する北京の複合施設「パングー・プラザ」のロゴや施設の映像が適切に盛り込まれていないのは契約違反に当たるとして、作品の再編集か公開中止を求める騒動も起きた(2日後に和解)。

 中国市場での興行を成功させるため、中国に関連したエッセンスを取り入れるハリウッド映画が近年急増する中、「トランスフォーマー/ロストエイジ」はこれまでで最も“媚中”的にトランスフォーム(変形)された作品とも揶揄(やゆ)されている。中国の映画産業に詳しい豪州のクイーンズランド工科大学のマイケル・キーン教授はAP通信に「こうした合作スタイルの映画制作は、適切な処置を誤ると、中国人からも世界からもそっぽを向かれかねないリスクを抱えている」と話している。

ランキング