「コンプガチャ」規制検討で暗雲 SNSゲーム大手2社、株価急落
2012.5.8 05:00更新
ソーシャルゲームを日本を代表する成長産業に押し上げた源泉に暗雲が立ちこめている。グリーとディー・エヌ・エー(DeNA)の大手2社が採用しているネット課金方法の一つ「コンプリートガチャ」が景品表示法に抵触する可能性が出ているからだ。消費者庁は規制に向けた検討に入り、近く正式な見解を公表。業界に対応を求める方針だ。任天堂など従来の家庭用ゲーム機メーカーもネット課金に新たな収益源を求めており、当局の規制を受けないビジネスモデルの構築が急務だ。
7日の東京株式市場では2社に限らず、ソーシャルゲーム関連銘柄がそろって急落。特にグリーとDeNAはストップ安となり、両社の時価総額は、たった1日で合計2000億円も減少した。
ソーシャルゲームは「ガチャ」と呼ばれる抽選方式の課金モデルを収益源とし、2社の総売上高の9割以上を課金収入が占める。ガチャ課金で特定のカードを数種類集め、さらに希少なカードを手に入れる「コンプリートガチャ」は、グリーの「探検ドリランド」、DeNAの「アイドルマスターシンデレラガールズ」に採用され、これらのゲームの人気を下支えしている。
消費者庁はこれが景表法が禁止する「不当な景品」に当たると判断し、「問題になるケースが出てくれば適切な対応をとる。内部で検討をしている」(福嶋浩彦長官)という。
国内のソーシャルゲーム市場は今年度に4年前の70倍となる約3500億円に拡大する見通し。グリーは8日、DeNAは9日に決算発表を控え、ともに好業績が予想されている。だが、今回の問題は急成長がもたらした“ひずみ”ともいえ、「2社の業績を揺るがしかねない」(アナリスト)との懸念も広がっている。
DeNAが運営する「mobage(モバゲー)」などにゲームを提供するKlab(クラブ)は「既に改修の検討を始めており、消費者庁から中止要請があった場合は全面的に従う」としている。
一方で、インターネット課金ビジネスを取り入れようとする家庭用ゲーム機メーカーにとって、当局の規制は収益回復策への大きな妨げとなる。
「構造的に射幸心をあおり、高額課金を誘発するガチャ課金型のビジネスは、お客さまとの関係が長続きするとは考えていない」
任天堂の岩田聡社長は、ガチャ課金を取り入れることはない考えを示している。ただ、追加のゲーム内容のダウンロード販売も本格化させる任天堂は、携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」のダウンロードソフトを小売店の店頭やウェブサイトでも、購入できる決済方式を8月から導入するなど、新しい課金ビジネス作りの真っ最中。当局の規制が水を差すことがないよう、盤石のモデルを構築しなければ、高収益体質を取り戻すことは難しい。(高木克聡)