ミラノの創作系男子たち

社会に溶け込む科学の「伝道師」 周囲を魅了する気負わぬ生きざま (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 クリエーターの生活の特徴は、仕事の時間とそれ以外の時間にあまり境界線がないことだ。「お互いの不可侵条約を成立させないための理由」を自ら背負って生きている。とは言いながら、一方で、クリエイティブな作業のために「邪魔するな!オーラ」も強い。(安西洋之)

 しかしながらアンドレア・ベッラティには、そのような気負った雰囲気が一切ない。なにせ仕事のプレゼンに使うパワーポイントには、自分の娘たちはもとより親族や友人たちも出演してくる。あまりにあけっぴろげ。もちろん登場してくれる家族は「パパの仕事は意味がある。そのためなら喜んで!」と協力を惜しまない。

 アンドレアはイタリアのエネルギー企業・ENIの財団に勤めている。そこで社会に科学を定着させるための伝道師的な活動をしている。ある科学的なことがらを普通の人に説明するために、科学のエッセンスをもとにしながら美術・映画・歴史・文学など、あらゆる分野を総動員する。

 例えば、火山活動を説明するのにあたり、英国の画家・ターナーの絵『チチェスター運河』を見せる。19世紀前半、火山灰が散ったことによって出現した見事な夕日を描いたものだ。同時期、英国の小説家・メアリー・シェリーが退屈な長雨のなかで書いて誕生したのが怪奇小説『フランケンシュタイン』である。長雨は火山噴火の影響とされている。

 自然現象と社会生活や文化との関係が、このように示される。さまざまな入り口があれば、聞いている人たちもどれかは知っており、馴染みがある。タッチポイントを増やして、飽きさせない。そして子供たちにも、ふだん科学を意識しない大人たちにも、科学に距離を感じさせない土壌をつくっていく。

 「イタリアは人文学が伝統的に強いから、過去、ダ・ヴィンチ、ガリレオ、マルコーニと優秀な科学者が沢山いるにも関わらず、科学の位置が相対的に低い。お隣のスイスやドイツと事情を異にするところ」とアンドレアは話す。

 トップクラスのイタリア人科学者の数は豊富だが、彼らは欧州他国や米国で活躍していることが多い。

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