働き方

最低賃金引き上げ、中小身構え 人件費増加など懸念

 政府が最低賃金の引き上げに強い関心を示すのは、地方を中心に所得の底上げや個人消費の喚起につながるとみているためだ。一方、中小企業にとって、大幅な引き上げは人件費増加による収益圧迫につながるとして抵抗感が強く、賃上げできる環境整備を政府に求める声が出ている。最低賃金のあり方は毎年議論されている。ただ今年は、6月に決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で過去3年間の年率3%程度を上回るペースでの引き上げに期待を示したことで着地点が注目されていた。

 中央最低賃金審議会の小委員会は31日、2019年度の地域別最低賃金の改定について全国平均の時給を27円引き上げ、901円とする目安をまとめた。  

 「全国加重平均で27円と過去最大の引き上げ額」。最低賃金の改定の目安が示されたのを受け、菅義偉官房長官は31日の記者会見でこう述べ、「より早期に1000円となることを目指していきたい」と強調した。

 菅氏は5月中旬の政府の経済財政諮問会議で、民間議員が「5%程度を目指す必要があるのでは」と提案したのを受け、「地方で所得を上げて消費を拡大することがものすごく大事」などと賛意を示していた。

 一方、負担の増す中小企業は身構える。日本商工会議所の三村明夫会頭は31日に発表したコメントで「今年度は約4割であった最低賃金引き上げの直接的な影響を受ける企業がさらに増加することや、中小企業の経営、地域経済に及ぼす影響を懸念する」と指摘。その上で、生産性向上に取り組む中小企業への支援策など、賃上げしやすい環境整備を政府に強く求めた。

 最低賃金は地域によって異なる。示された目安通りになれば東京都と神奈川県は1000円の大台に乗せる。一方、2018年度は全国加重平均を上回るのは7都府県にすぎず、地域間格差の是正も重要な課題だ。格差が大きいままでは、大都市圏に比べて最低賃金が低い地方では人口流出などにつながりかねないためだ。(森田晶宏)

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