働き方

厚労省がパワハラ指針案修正、企業に防止義務 「個の侵害」など6類型を明示

 企業に初めてパワハラ防止対策を義務付けた女性活躍・ハラスメント規制法の来年6月の施行に向け、パワハラの定義や防止策の具体的内容を盛り込んだ指針が、厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会でまとまった。パワハラには侮辱、暴言の「精神的な攻撃」や仲間外し、無視の「人間関係からの切り離し」など6つの類型があると明示。対策として防止方針を掲げることや相談体制の整備など10項目を挙げた。

 指針はパブリックコメント(意見公募)を経て年内をめどに正式決定される。規制法施行は大企業が来年6月、中小企業は2022年4月。今後企業の取り組みが本格化するが、実効性は不透明だ。

 指針はパワハラを(1)優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害する-と定義。パワハラの6類型としてほかに、暴行や傷害などの「身体的な攻撃」、遂行不可能な仕事を強制する「過大な要求」、仕事を与えない「過小な要求」、私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」を挙げた。

 6類型の該当例に「人格を否定するような言動」「長時間にわたる厳しい叱責を繰り返す」「同僚が集団で無視をし孤立」などを列挙。該当しない例には「社会的ルールを欠いた言動を再三注意しても改善されないと一定程度強く注意」「新卒者の育成のため短期間集中的に別室で教育」などを盛り込んだ。

 企業の義務として、パワハラを行ってはならないと就業規則などで明確化するほか、プライバシー保護や、相談を理由に不利益な取り扱いをしないことも求めた。顧客によるカスタマーハラスメントや就職活動中の学生、フリーランスへの対応は義務付けていないため、適切な対応を求めるにとどまった。

 パワハラの判断は当初「平均的な労働者の感じ方」を基準としたが、国会の付帯決議などを踏まえ「相談者の受け止めなどの認識に配慮」することも追加した。厚労省は10月下旬に指針の素案を提示したが、「定義が狭い」と労働側が反発。予定されていた分科会の開催が見送られるなどして素案提示から1カ月後の再提示となった。20日の分科会でも議論は続き、途中休憩をはさんで修正、合意した。

【用語解説】ハラスメント被害

 パワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」について厚生労働省の労働局に寄せられた相談は年々増加し、2018年度は約8万2000件と相談内容別でトップ。セクハラは約7600件、育休や妊娠出産をめぐるマタハラは約4200件に上る。就職活動中の学生に対するセクハラ、顧客や取引先からの迷惑行為であるカスタマーハラスメントの被害を訴える声も多い。性的指向・性自認を本人の了解なく第三者に暴露する「アウティング」をめぐっては男子大学生が死亡したケースがある。

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