上司から物を投げつけられた。
同僚がいる場所で怒鳴られた。
長期間にわたって別室へ隔離された。
仕事を外され自宅で研修を受けるように言われた。
廊下やエレベーター内で上司から腰や手をさわられた。
こんな経験をお持ちの方はいるだろうか。
これらはれっきとしたパワハラ、セクハラ行為である。
ここ数年、パワハラをはじめ様々なハラスメント(嫌がらせ)のニュースが急増している。
全国の労働局や労働基準監督署に設置されている「総合労働相談コーナー」に、昨年寄せられた相談件数は111万7983件。このうち「いじめや嫌がらせ」に関するものが8万2797件(民事上の個別労働紛争における全体の25.6%で割合は1位)。7年連続で増えている状況だ。
日本だけでなく世界各国でも増えている。セクハラ防止を訴えた「me too 運動」のニュースをご覧になった方も多いのではないだろうか。
こういった状況を憂慮して、昨年、国際労働機関(ILO)は年次総会の場で、職場での暴力やハラスメントを撤廃するための条約を採択した。仕事に関するセクハラ、パワハラを禁止する初めての国際基準である。
今年6月には日本でも「パワハラ防止法」(正式には改正労働施策総合推進法)」が施行される。この法律により、企業にはパワハラに対する相談体制の整備や被害を受けた従業員へのケア、再発防止などが義務づけられる。
大手企業ではすでにハラスメントの相談窓口を設置しているところが多いが、従業員が相談をためらうケースがある。「相談したことを会社に知られたくない」「相談員が社員のため、相談しにくい」といった声が多いのが現状だ。
中小企業になると、そもそも対策を講じていない組織が多い。その理由は、社内に専門知識を持った人材がいない、研修を行う余裕がないなど、様々である。とはいえ対策が急務であるのは間違いない。
こういう事情を背景に、中小企業を対象としたハラスメント相談を担うサービスが登場した。1月30日に始まった「ELPIS(エルピス)-ハラスメントホットライン」がそうだ。
このサービスでは、相談に応じるのは社内の人間ではなく、外部の労務問題専門の社会保険労務士。従業員は自分の名前や会社名を非公開で相談することができ、会社へ通知するか否かも選択できる。相談はメールで行うため、ネット環境があればどこからでもOK。社労士から24時間以内に回答が戻ってくる仕組みになっている。万が一、訴訟トラブルになった場合も対応が可能だ。また、パワハラやセクハラだけでなく、30種類以上あると言われる幅広いハラスメントへの対応も受け付けている。