働き方

春闘、雇用確保では一致も手段めぐり同床異夢

 政府が経営側に賃上げを要請する「官製春闘」の効果もあり、平成26年から賃上げの勢いは続いていた。だが、新型コロナウイルス禍が経済を激変させ、春闘は大きな節目を迎える。雇用不安が強まる中、中西宏明会長はメッセージで「事業継続と雇用の維持が最優先」との見解を表明し、労組と足並みをそろえた。だが、いかに雇用を確保するかという具体的な手段では労使双方に隔たりがある。

 連合は今年もベア2%程度と6年連続の統一要求を掲げたが、身内であるホンダやマツダなどの労組がベア要求を見送った。コロナ禍で、春闘の焦点は賃上げよりむしろ、雇用の確保に移っている。

 連合の神津里季生会長も、「雇用維持が大前提」と強調。雇用調整助成金の特例措置延長や給付金の拡充といった、セーフティーネットの強化を政府に求めた。

 一方、経営側に対し連合は、賃金や雇用を維持するため、「サプライチェーン(供給網)全体で生み出した付加価値を適正分配する」ことを要求。コロナ禍で落ち込んだ経済の痛みを産業界全体で分かち合うことを迫る姿勢だ。

 これに対し、経団連ではコロナ危機を契機に、「働き方改革」による生産性向上で、雇用維持を図る方針を掲げる。テレワークなどで、労働を時間だけで管理するこれまでの日本型雇用慣行は限界を迎えていると主張。業務と成果で仕事を評価する欧米型の「ジョブ型」の拡大も訴える。

 雇用問題に詳しい日本総合研究所の山田久副理事長は、「今までの働き方とジョブ型を組み合わせる日本型のハイブリッドの雇用と賃金の制度が必要だ」と指摘。今年の春闘を「これらの制度変更に向けたきっかけにすべきだ」と訴える。 コロナ禍で日本の雇用制度は転換点を迎えている。(平尾孝)

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