働き方

「休業支援金」制度周知が課題 仕組み複雑化、企業不払い助長リスクに

 政府は、労働者が休業補償を直接国に請求できる休業支援金・給付金の対象を、中小企業だけでなく大企業の非正規労働者にも拡大した。対象期間も、1回目の緊急事態宣言があった昨春まで遡及(そきゅう)し、枠は広がった形だが、特例を重ねて仕組みが複雑化。自分が対象かどうかを知らず、申請に至らない人もおり、制度周知が課題として残る。安易な企業の不払いを助長するリスクも潜む。

 賃金の8割支給

 労働基準法では企業の都合で休業させた場合、平均賃金の6割以上の支払いを求めている。コロナ禍で企業から補償してもらえない事例が相次いだことから、昨夏、休業支援金が新設された。大企業と比べて経営基盤が弱い中小の働き手を救うのが目的で、賃金の8割を支給する。

 ただ、大企業は対象外。このため大企業の非正規労働者が制度のはざまに落ちることになった。国会論戦の焦点にもなったが、厚生労働省は対象拡大には慎重だった。負担を逃れるための企業の安易な不払いを許すことになるという立場だ。

 休業手当をめぐっては、企業が支払う手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金制度がある。政府は雇用調整助成金の特例として助成率を大幅に引き上げ、利用を促進。支援金はあくまで助成金の補完的役割との位置付けだった。

 潮目が変わったのは、菅義偉首相が休業手当を受け取れない大企業の非正規労働者に、野党に迫られる形で面会した1月29日。その後、2月に入って官邸が主導する形で対象拡大に向け一気にかじを切った。支持率を意識したとみられる。

 “一線”となっていた大企業への対象拡大を早々に決め、12日には野党が求める昨春からの遡及適用を打ち出した。ある厚労省幹部は「特例を重ねすぎて制度の原形をとどめていない」と苦笑いする。

 大企業の飲食店で勤務し、昨年の宣言時に休業手当を受け取れなかった女性(47)は「経済的に苦しかったのでうれしい。勤め先の規模で救済されるかどうかが変わるのはおかしな話」と訴えた。一方、労働組合「首都圏青年ユニオン」の尾林哲矢事務局次長は「自分が対象者と分かっていない人も多く、制度の周知をもっと進めるべきだ」と指摘する。

 背景に企業心理

 雇用調整助成金の活用に消極的な企業がある背景には、金銭的、事務的負担が企業側に発生することや、休業手当を支払う前例自体をつくりたくないという企業心理があるとみられる。

 不払いは、労働基準法の趣旨に反する形だが、厚労省関係者は「コロナの影響で、法律に規定された『企業の責任による休業』かどうかを判断するのが難しいケースもある」と打ち明ける。

 龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「コロナ禍で非正規労働者の立場の弱さが改めて浮き彫りになった。事業者の規模や、細かい契約形態にかかわらず休業中の労働者の生活保障がされる仕組みを検討していく必要がある」と話した。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus