パネルディスカッションでは、遺伝子の不思議について厚い意見が交わされた=大阪市中央区の松下IMPホール
<うすみ・こうじ>1954年生まれ。東京大学医学部卒。NPO法人KYG協会理事長。医学博士。専門分野は核酸の栄養学、ダイエット指導など。
宇住: 人間の生命の営みが解明されてきた。そのキーワードは遺伝子。塩基配列が解読され、そこにタンパク質の設計図があり、いろんな働きをして体を維持している。その設計図はどういうタイミングで働くのか。また酸化的ストレスというキーワードも出てきた。これが遺伝子に悪さをするのだが、食べ物から核酸栄養が作られ、酸化的ストレスに対する抵抗性を強める。胎児期の栄養摂取の大切さも話された…というのが今日の講演内容だったが、難しかったかも。
司会: 酸化的ストレスによって遺伝子が傷つき、病気や老化につながるが、核酸を取ることで遺伝子を修復していると考えてよいのですか
松永: 遺伝子を傷つけるのは活性酸素。時間がなくて講演では説明しなかったが、傷を修復するのは「p53」というがん抑制遺伝子です。傷を直し、修復が間に合わない場合は傷ついた遺伝子を持っている細胞を自殺させたりもする。このp53を活性化させるのが核酸です。
宇住: 動物には核酸についての科学的知識はないが、おいしいと感じることで、ほかの生き物の核酸を摂取している。体内で作る核酸が足りなくなり、外から補給の必要性が出てきたとき、うまみという形で取り入れようとする。でも、小さいころから加工食品をベースにしてきた子供は自分にとって本当に必要なものか選別できるのか、おいしいと感じられる味覚が育っているのか、気になります。
司会: 確かに食品添加物とか加工食品が増えていますね
服部: 60カ国ほどの家庭料理を見てきたが、日本ほど家庭の味が失われているところはない。昔は加工食品が1、2割で後は母親の手作りだったが、今は逆。子供らにおふくろの味を聞いてみたら○○食品の××だという。それはおふくろじゃなく「お」を取った袋の味です。
<すいた・あすか>同志社大学卒。NHK「生活ほっとモーニング~健康スペシャル~」の司会を9年間務めるなど、健康をテーマに活躍中。
塩田: 酸化的ストレスを動物や人間に加えていくと体内に活性酸素やフリーラジカルが増えてくる。核酸栄養を取ることでこれを抑え、病気の進行を遅らせたり、治したりできる。われわれは脳卒中や痴呆、高血圧などについても、核酸栄養を取ることでこれらの疾患の予防や治療ができると考えている。科学的に検証をとることにより、健康食品として核酸栄養を使えれば効果的だ。
司会: 普段の食生活で、核酸をどのように取れば良いのか
松永: 多く含むものは海産物やキノコ類だが、通常の食事をキチンと取り、サプリメントで補うのが良いのではないか。
宇住: 生き物を食べることは細胞にある遺伝子を食べること。でもその生物にはならない。豚肉を食べてもブタにはならない。食べすぎるとブタみたいにはなりますが(笑い)。
塩田: 栄養バランスでいうと核酸は補助食品的なもので、主な作用は酸化的ストレスを減らすものとして、ビタミンとかミネラルです。日本は伝統的に米食中心の食生活であったが、欧米流の食事が入ってきて食生活が乱れた。
司会: 日本食の見直しは大事ですね
服部: 日本のだしは世界的に注目されている。7世紀中ごろに天武天皇が動物を食べてはいけないというお触れを出し、表向きは明治時代まで肉が食べられなかった。この結果、野菜にうまみをつけるなど工夫が行われ、日本古来の技術が生まれた。この点をとらえて、核酸の素晴らしさを取り入れた、新しい日本料理を確立したい。
宇住: これまで遺伝的なことだとあきらめていた人も、遺伝子には健康になろうとする力を引き出す仕組みがあることを知ったわけだから、良い遺伝子がどうしたら働き出すのかを学び、食生活に生かしてもらいたい。誰かに頼るのではなく、自分で考えて行動してほしい。