おそらく、なにを作るにしても、1回目はまず上手くはいかない。不味いものができあがってくると思っておいたほうがよい。それでも、一緒に食べながら失敗の原因や次はどうするか意見を交わし、再チャレンジさせたい。
そのプロセスを通して、子どもなりの気づきや工夫が見られれば、その子は学習能力が高いと思ってよい。逆に、「上手くできなくてもいい(端から諦めている)」「どこがよくなかったか想像がつかない」「改善方法がまったく思い浮かばない」といった反応であれば、この時期の受験は見送ったほうがよいかもしれない。
中高一貫校の適性検査に「料理」
じつは、「料理をさせてみる」ことを推す理由はもう一つある。こちらは、公立の中高一貫校の適性試験を受検させようという場合にほぼ限られるが、適性試験の問題で料理(調理)が題材になることは稀ではない。
今春であれば、①長野県の共通問題、②福岡県の共通問題、③大阪市立の某中学校などで、料理(調理)を題材(下敷き)にした問題が出題されている。
《実際にあった適性試験の問題例》
①長野県
手ごねパンを作る際に、一次発酵時の温度やドライイーストの量を変えて作ってみて、できあがり具合の違いからそうなる理由を考えさせる問題
②福岡県
朝食全体の栄養バランスの観点からみそ汁に追加する具を選ばせ、それらの具を選んだ理由を考えさせる問題と、ゆで卵と温泉卵の作り方の違いとそうする理由を考えさせる問題
③大阪市立の某中学校
カレールーのレシピを提示した上で、どういう買い物の仕方をすれば、安く無駄なく材料を揃えられるかを考えさせる問題
子どもであっても大人であっても、一度経験していること(見聞きしていること)に対しては直観が働きやすい。料理(調理)の経験は、適性検査(理系)や理科の入試問題に対して、有効であることはあっても無駄になってしまうことはないはずだ。
子どもの料理、親としての「心構え」
筆者はかつて、理科の授業のネタ集めに『「こつ」の科学―調理の疑問に答える』を通読したことがあるのだが、「料理は化学である」とはよく言ったもので、筆者にとっては料理(調理)も化学実験も同じようなものである。
もしあなたのお子さんが、好奇心旺盛で質問攻めにしてくるタイプなら、料理(調理)をさせてみる前に、『「こつ」の科学―調理の疑問に答える』や『「食品の科学」が一冊でまるごとわかる』を読んで、理論武装しておいたほうがよいかもしれない(笑)。
【受験指導の現場から】は、吉田克己さんが日々受験を志す生徒に接している現場実感に照らし、教育に関する様々な情報をお届けする連載コラムです。受験生予備軍をもつ家庭を応援します。アーカイブはこちら