パラカヌー体験会(上)

    坂道なし、段差なし 水上は究極のバリアフリー

    まだ着られる中古衣類の寄付で障害者スポーツ(パラスポーツ)を応援する「ふくのわプロジェクト」(産経新聞社主催、オフィシャルパートナー・富士紡ホールディングス)は、応援先競技団体の一つ「日本障害者カヌー協会」の協力のもと先月16日、霞ケ浦にあるラクスマリーナ(茨城県土浦市)で、パラカヌー体験会を開きました。

    競技カヌーのデモンストレーションをする朝日省一さん
    競技カヌーのデモンストレーションをする朝日省一さん

    坂道や段差がない水上は「究極のバリアフリー」とも呼ばれています。水上を舞台に、障害者と健常者がともに体を動かせるのが、カヌーの魅力です。体験会には、下半身に障害を抱え、車いすを使う子供を含む計26人が参加。パラカヌー選手らに漕(こ)ぎ方のコツを教えてもらいながら、カヌーの楽しさと共生社会への理解を深めました。[撮影:萩原悠久人(写真報道局)文:篠原那美(編集局編集企画部)]

    ■現役パラカヌー選手 朝日省一さん「若い世代に魅力知ってもらいたい」

    今回の体験会で、漕ぎ方などを指導していた朝日省一さん(48)は、現役のパラカヌー選手で、茨城県障害者カヌー協会代表も兼ねる。交通事故で両脚を失ったが、3年前にカヌーと出会い、競技艇にも挑戦するようになった。

    この日は午後から、競技カヌーの実演が行われた。同協会の菅谷彰宏さんが「カヤック種目」を、朝日さんが片側に浮力体のついた「アウトリガーカヌー」を使う「ヴァー種目」を披露した。

    「速い!」「すごい」。パラリンピックでは〝水上のF1〟とも呼ばれるパラカヌー。圧倒的なスピードに、岸から感嘆の声があがった。

    「こうしたイベントで、自分たち障害者と健常者の方が一緒にカヌーを体験することが大切だと思う」

    見据える先には、日本パラカヌー界の発展がある。パリ・パラリンピックの次、米ロサンゼルス大会で活躍できる若い日本選手が少ないという現状がある。

    「若い世代にカヌーの魅力を知ってもらい、練習環境も整えながら、後進を育てていきたいですね」

    ■健常者と障害者 一緒に楽しめる! 飯沼世成さん

    「これは回転しやすくて、難しいぞ」。スタッフから、幅の狭いカヌーを薦められた中学1年生の飯沼世成(せな)さん(13)。

    先天的に右脚がなく、車いすで生活しているが、がっしりした上半身からアスリートのような風格が漂う。小学2年生で始めた車いすバスケットボールに加え、ソフトボールやパワーリフティングにも挑戦しているそうだ。

    パラカヌーに出会ったのは1年ほど前。競技者から指導を受けて、技術を磨いている最中だ。

    「親としては、いろんな競技を試してほしい。自分のやりたいことを決められるように手伝いができたら」。両親は目を細める。

    「今日の目標は速く、まっすぐ漕ぐこと。うまくなりたいので、毎回テーマを決めています」。水上で揺れる感覚、沖で感じる風の心地よさ。そして、健常者と障害者がともに楽しめるのが、カヌーの魅力だと世成さんは語る。

    「いつか友達を誘って一緒に乗れたら、もっと楽しいんじゃないかな」

    ■笑顔で「楽しい」親子息ぴったり 冨嶋美月ちゃん

    「早く乗ってみたいな」。並んだカヌーを見て胸を躍らせていたのは冨嶋美月ちゃん(6)。2歳のころに脊髄梗塞を患い、下半身が不自由だが、この日は母、里美さんと2人乗りのカヌーに挑戦した。

    美月ちゃんは艇内で足を踏ん張ることができないため、足元や腰回りにスポンジ状の緩衝材を敷き詰めて、安全を確保する。準備が整ったところで、水の中へ。動きだした瞬間、「怖い」と叫んだ美月ちゃんだったが、カヌーが水上を滑りだすと、緊張もほどけて、やる気満々。

    右、左、右、左―。美月ちゃんと里美さんのパドルはリズムよく湖面をとらえ、岸からぐんぐん遠ざかっていった。

    1時間後、休憩のために戻ってきた。「カヌーは2回目ですが、美月が自分で漕ぐのは初めて。活発な子なので、これからも体を動かせることに挑戦してほしい」。そう話す里美さんに、美月ちゃんはせかすように呼びかけた。

    「もっと乗りたい! 休憩終わり~」

    ■ふくのわプロジェクト 衣類寄付でパラ団体支援

    家庭などからまだ着られる衣類を寄付してもらい、専門業者に売却した収益金でパラスポーツの競技団体を応援するプロジェクト。寄付された衣類は選別され、世界15カ国以上で販売される。2016年に始まり、これまで約530㌧が集まり、約840万円が競技団体などに寄付された。

    活動を通じたSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指しており、運送の効率化による二酸化炭素排出の抑制や小中高校で環境教育なども展開している。衣類を寄付するのに便利な宅配キット「おうちでふくのわ」(税込み2500円)を販売中。段ボールなどでも送れる。

    衣類の寄付は〒300 0726 茨城県稲敷市西代703 ふくのわ係。送料は寄付者でご負担ください。

    「ふくのわプロジェクト」はこちら


    (富士紡ホールディングスpresents)


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