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IoT家電 普及の壁はメーカーの囲い込みか

国内電機メーカーが、家電をインターネットにつなげて付加価値を高める「IoT家電」の販売を強化している。新型コロナウイルス感染拡大により在宅時間が増え、調理家電や空調機器などが人気だ。ただ、連携は自社製品同士でしか機能しないものがほとんどで、専門家は「企業がユーザーの『囲い込み』に走っているうちは国内での普及には限界がある」と指摘する。

シャープのIoT対応のキッチン家電=大阪府八尾市
シャープのIoT対応のキッチン家電=大阪府八尾市

世界で、IoT家電などネットに接続する家庭用機器の普及が進んでいる。総務省の令和2年版「情報通信白書」の推計によると、その数は2022年には世界で87億台に達すると見込む。15年の実績と比較すると約4倍となり、世界で急速に普及が進むことが予想されている。

国内ではシャープが平成27年、いち早くIoT家電を市場に投入。今年8月には累計出荷台数が400万台を超えた。コロナ禍による巣ごもり需要により昨年の家電全体の販売が好調で、IoT家電の普及も後押ししたとみられる。

同社の調理家電はネット経由でレシピを追加して、最大千種類を超える料理ができる。冷蔵庫と連携させることで残った食材を使ったレシピも提案でき、担当者は「メニューの更新など、発売後も商品をより良く改善できるのがIoT家電の強み」と強調。今夏にはベンチャー企業のテーブルズ(東京都港区)と連携し、一流シェフの味を再現するサービスも開始し、ユーザーの取り込みを図る。

シャープのエアコンと空気清浄機を連携するアプリ画面=大阪府八尾市
シャープのエアコンと空気清浄機を連携するアプリ画面=大阪府八尾市

一方、パナソニックは今年9月、令和6年度までに国内で販売する家電製品の6割をIoT対応にすると発表した。自社のIoT家電利用者を1千万人に引き上げることを目標にする。10月には洗濯機やロボット掃除機などの稼働状況や消耗品交換の時期などをテレビやスピーカー搭載の家電で知らせる「音声プッシュ通知」を開始。来春には宅配便の配送予定を知らせる機能も追加する予定だ。

また、コロナ禍による衛生意識の高まりに対応するため、各社は空調機の連動にも力を入れる。エアコンの風量や風向きを制御しながら、空気清浄機の飛沫(ひまつ)などの捕集に役立てる機能は、パナソニックやシャープのほか、ダイキン工業の製品でも備えている。

各社は、成熟した家電市場で、IoTに対応することで、新たな需要を掘り起こしたい考えだ。ただ、りそな総研の荒木秀之主席研究員は「企業の垣根を越えた連携が進まないと普及は難しい」と話す。欧米では米グーグルやアップルなどが提供する人工知能(AI)搭載のスマートスピーカーを介して家電をつなげており、「国内企業による独自機能の強化はガラパゴス化を進めるリスクがある」と指摘する。

こうした状況を打開しようとする新たな取り組みもある。今年11月、室内の家電をスマートフォンアプリで操作できる賃貸マンションの提供を始めた三菱地所は独自にアプリを開発、複数メーカーの家電を一括管理できるようにしている。(桑島浩任)


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