《今回の社長を目指す法則・方程式:ティナ・シーリグ「インベンション・サイクル② クリエイティビティ=やる気を高める+実験を繰り返す」》
ポストコロナに向けて、上司の皆さんにこれから求められるのは、次の時代への「非連続的」なジャンプです。足元の改善から事業の変革まで、上司の皆さんのアイデアを形にする力が、これまで以上に要求されるようになっています。
前回は、スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授(工学部)が提唱する、アイデアを実現するリーダーになる4つのステップ「インベンション・サイクル」をご紹介しました。「想像力」を起点に「クリエイティビティ」「イノベーション」を経て「起業家精神」を発揮するサイクルです。
今回は、「想像力」の次のステップ「クリエイティビティ」にフォーカスします。私たちはどのようにすれば、クリエイティビティを発揮できるようになるのでしょう?
ビジネスにおける「クリエイティビティ」とは?
皆さんが「クリエイティビティ」と言われて思い浮かべるものはなんでしょう? iPhoneのような私たちの生活を一変させる商品でしょうか。あるいは、YOASOBIやAdoのようなミュージックシーンを席巻する新感覚の楽曲か、はたまた、圧倒的な映像美で魅せてくれる映画(「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督最新作、「DUNE」は圧巻でした)を思い浮かべる方もいるかもしれません。
見方によっては、エンゼルスの大谷翔平選手の“二刀流”もクリエイティビティ発揮の極みと言えるのではないかと思います。なぜならば、シーリグ教授によれば、クリエイティビティが発揮されるには、実現したいことへの強い意欲と、その方法を見つけるための実験的な試みを行う前向きな姿勢が必要だというからです。
その意味で、大谷選手は、日本ハム時代の栗山監督、エンゼルスのジョー・マドン監督という、「二刀流をやりたいという大谷選手の邪魔をしない」という考えを持ってくれた二人の監督に恵まれたことが非常に大きいと思います。既存の常識に縛られず、投手と野手を両立させるコンディショニングや起用を行った大谷選手と監督・コーチ陣こそ、MLBにイノベーションを起こしたクリエイティビティの発揮者であるといえるでしょう。(プロ野球で先発投手かつ1番バッターなど、漫画『ドカベン』の原作者・水島新司先生の作品でしかありえないと多くの人が思っていたはずです。しかもMLBで!)
では、「クリエイティブなアイデア」とは何なのか。シーリグ教授は、具体的なニーズを満たし、社会の中で目に見える形になっているものだと定義します。そして、想像力とクリエイティビティは、以下のように区別することが非常に大事だとも指摘しています。
- 頭の中に海辺の光景を思い浮かべるのは想像力、その光景を絵に描くのがクリエイティビティ
- 空飛ぶ自動車をイメージするのは想像力、実際に空飛ぶ自動車を作るのがクリエイティビティ
「想像力」の段階から「クリエイティビティ」の段階に進むとはどういうことか、ご理解いただけたことと思います。
ジョージア大学トランス・クリエイティブセンターのマーク・ランコとガレット・イエガーは共同論文で「クリエイティビティには、独自性と有効性の両方が必要である。独自性は必要不可欠だが、それだけでは十分ではない。独自性のあるものがクリエイティブであるためには、実効性がなければならない」と定義しています。即ち、上司の皆さんにとって、ビジネスにおける「クリエイティビティ」とは、想像力を駆使して課題を解決することを指すのです。