この度、ご縁がございまして、SankeiBizで連載を持たせていただくことになりました桶井道(おけいどん)と申します。投資歴23年、日米を主に世界17カ国と地域の増配株をメインに投資しています。2020年秋、1億円の貯蓄を区切りに47歳で25年間勤務した会社を辞め、経済的な自立と早期退職を意味する「FIRE」(ファイア)を達成しました。僭越(せんえつ)ながら皆さまのお役に立てるアウトプットに努めて参りますので、よろしくお願いいたします。
「得」と「損」を均衡させる
第1回目の今回は、投資家としても一年の締め括りとなる12月ということもあり、証券税制の「節税」関連のお話をしたいと思います。皆さんは「損出し」をご存知でしょうか? 株の売却益には約20%課税されますが、賢く節税したいところです。
さて、米国の代表的株価指数であるニューヨークダウ(NYダウ)は2020年3月以降、世界的な金融緩和によって今年の8月にかけて上昇し、いったん調整したものの再び秋にも上昇しました。その間に利益確定し、売却益(譲渡益)が出た方も多くいらっしゃると思います。
東京株式市場の主要な株価指数である日経平均株価(225種)は、2020年3月以降、同じ理由によって今年2月にかけて上昇し、再び8月後半から9月前半にかけ、また秋にも上昇しましたので、その期間に利益確定し、売却益が出た方もいると思います。他方で、今年2月後半から8月前半は難しい相場であり、含み損のある銘柄を持っている人もいるかもしれません。
少額投資非課税制度のNISA口座は別として、日本株も米国株も(もちろん、その他の国の株も)売却益には約20%課税されます。100万円利益が出ますと、うち約20万円を納税することとなります。なかなか大きな額ですね。そこで、「損出し」によって、節税するということです。
「損出し」とは、含み損のある銘柄をいったん売却して損失を確定させることです。これにより、その年に確定した売却益にかかる税金を相殺して、節税が可能となります。
具体例を挙げて説明しましょう。その年に確定した売却益の合計が200万円とします。それに掛かる税は約20%で約40万円です。ここで、含み損が30万円ある銘柄と70万円ある銘柄を売却すると、合計で100万円の損失が出ます。利益(売却益)と損失を差し引きすると、200万円(利益)-100万円(損失)=100万円(最終利益)となり、税金は約20万円となるわけです。
目指すは“攻守”そろった投資家
これで約20万円節税できたことになります。お分かりいただけますでしょうか。簡単に言えば、「得」と「損」をできるだけ均衡させることで、節税が可能になるということです。
ここで、より伝わりやすいよう、図解しましょう。
いかがでしょう。ご理解いただけましたでしょうか。仕組みをご理解いただけたとしても、含み損のある銘柄を売却して損失を確定することに抵抗があるかもしれません。が、「損出し」は「損切り」とは違います。いったん売却はしますが、翌営業日以降に再び買い戻せば済む話であって、1日限りの「形だけ」の売却です。
ただし、「損出し」のために売却するには、注意事項が5点あります。
- 損出しで、売却した銘柄を買い戻すのは、必ず翌営業日以降にして下さい。当日に買い戻しすると、「損出し」になりません。
- 配当金の権利付最終日に気を付けて下さい。損出しのために売却したことで、配当金が得られなくならないようご注意下さい。
- 損出しのタイミングは年末では間に合いません。大納会の2営業日前までに行なってください。それを過ぎると、翌年の精算となり、当年の損出しが出来ません。米国株など外国株の場合は、時差や受渡日の関連が難しいため、早めに動かれて下さい。
- 損出ししてから再び買い戻すということは、2度の売買手数料が発生します。手数料が比較的高くなる外国株では、手数料に気を付けて下さい。
- 損出しにより節税が可能となるのは、同じ証券会社の口座のみです。例えば、A証券会社でX社の株を利益確定して、B証券会社でY社の株を損失確定しても、自動的に相殺することはできません。この場合は、確定申告が必要になります。
証券税制には難しい部分が多くありますが、勉強することで節税が可能となるケースが少なからずあります。投資は攻め、節税は守り。攻守そろった投資家を目指したいものですね。
本日は、「損出し」について解説しました。
最後に、この記事では節税についてご紹介しましたが、あらゆる意思決定、最終判断はご自身の責任において行われますようお願いいたします。ご自身の資産運用などにおいて損害が発生した場合、筆者は一切責任を負いません。ご了承ください。