岸田政権が情けない。18歳以下の10万円給付問題と外交ボイコットといった簡単な問題に答えが出せないからだ。
10万円給付金問題は、5万円の現金と5万円分のクーポンで分けるという政府方針を、単に事務手続きの簡素な現金10万円にすればいいだけだ。13日の衆院予算委員会で、ようやく首相は、自治体が希望すれば、年内に現金10万円を一括給付できるようにしたいと方針を修正した。ここまで散々世間からの批判を受けてきた。また松野博一官房長官や山際大志郎経済再生相の答弁もグダグダだった。
経済効果の点では現金一括でもクーポンでも大差ない。単に事務上の問題や、支給のタイミングが議論になる程度だろう。だが、この「程度」の話題にいつまでも簡単明瞭な対応ができていないのが現在の岸田政権なのだ。
冬季五輪で迫られる対応
また北京オリンピックへの外交ボイコットは、日本政府が人権重視の立場を国内外に鮮明にすることだけではない。多くの論者が指摘しているように、明らかに親中派といっていい林芳正外相を起用したことで、国内だけではなく海外、特に米国政府から岸田政権は「中国寄りという懐疑」の目を向けられている可能性がある。その象徴が、日米首脳会談が開催される目途が立っていないことだ。
このような米国の岸田政権への「懐疑」には見覚えがある。それは韓国の文在寅政権の親中姿勢に対して、トランプ政権が示した姿勢だ。文政権の「媚中外交」に、米政権の当事者たちは警鐘を非公式に鳴らし続けていたという。
岸田政権も「媚中外交」の危険性が高いものと、米政権は動向を懐疑の目で見ているのかもしれない。北京オリンピックについては閣僚級の派遣を控えると声明を発表すればいいだけだ。これも実にシンプルなものだと思う。外交ボイコットの問題は時間が長引けば長引くほど、中国共産党やそのシンパに国内世論や同盟国間の分断工作を行わせる隙を与えることになる。
中国共産党のシンパかどうかは不明だが、実際にワイドショーなどでも外交ボイコットに反対する意見を頻繁に聞くようになっている。あれほど東京オリンピックでは、人権や生命を重視した「開催中止」の声をテレビやネットで見たものだが、これはどうしたことだろうか。北京オリンピック以後に予想される台湾や尖閣諸島への軍事的脅威の高まりを考えれば、外交ボイコットの決断を先延ばしにし、国内外の分断に貢献するのは単に愚かである。