渋谷区立宮下公園がバグに侵食!? 謎解きクリエイター・松丸亮吾と大日本印刷が語る…仮想と現実社会の“融合”が紡ぐ価値

    東京・渋谷の「宮下公園」が原因不明のバグに“浸食”されている! といえば何やら一大事のようにも聞こえるが、実はこれは仮想空間での話。バーチャルな世界に築かれた宮下公園で自身のアバター(分身)を操って謎解きしながらバグ(プログラムのミス)を撃退するという、オンラインゲームイベントの状況設定だ。謎解きクリエイターの松丸亮吾さん(26)がプロデュースしたこのイベントは、リアルとバーチャルが融合した初の謎解きイベントとしてSNSでたちまち話題になり、謎解きをクリアしてから実際に宮下公園を訪れる人も少なくないという。松丸さんと、イベントを開催した大日本印刷株式会社(DNP)地域XR事業推進部長の宮川尚さんの対談で、現在開催中の「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK(ミヤシタミステリーパーク)」の魅力と、仮想と現実社会を重ね合わせて融合させるコミュニケーションの可能性について語ってもらった。

    「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK」をプロデュースした謎解きクリエイターの松丸亮吾さん(左)とイベントを開催した大日本印刷株式会社地域XR事業推進部長の宮川尚さん(SankeiBiz編集部)
    「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK」をプロデュースした謎解きクリエイターの松丸亮吾さん(左)とイベントを開催した大日本印刷株式会社地域XR事業推進部長の宮川尚さん(SankeiBiz編集部)

    DNPは、年齢・性別・言語などによって分け隔てられることなく、リアルとバーチャルの双方を行き来できる新しい体験と経済圏を創出する「XR」(eXtended Reality:エックスアール)コミュニケーション事業を展開している。その中核となるのが「地域共創型XRまちづくりPARALLEL CITY(パラレルシティ)」だ。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術で、現実の地域や施設の価値・機能を拡張し、生活者に新しい体験を提供して地域創生につなげようとしている。

    渋谷区立宮下公園XR化の事業もその一環。宮下公園パートナーズ、一般社団法人渋谷未来デザインと連携し、実在する宮下公園をバーチャル空間「渋谷区立宮下公園 Powered by PARALLEL SITE」として忠実に再現した。そして、現実の公園とバーチャル空間を連動させて都市公園の価値を向上させ、新たな賑わい創出の試みとして開催されているのが「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK(ミヤシタミステリーパーク)」だ。

    2022年2月28日まで開催されている「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK」
    2022年2月28日まで開催されている「松丸亮吾の MIYASHITA MYSTERY PARK」

    子供の頃楽しんだ「バグ技」を追体験

    宮川さん

    リアルの世界をそのままバーチャル空間に拡張していったらどんなことが起きるんだろうという思いがありました。例えば、宮下公園のような公共空間を「ジャックしたい」とか、そういった欲求を持つ方もいるんじゃないかと。リアルな場所を仮想空間にコピーして自由に使ってもらえたら、どういう世界ができるんだろうと思いまして、今回クリエイターの一人として松丸さんにお声を掛けさせていただきました。おかげさまでミヤシタミステリーパークは大好評で、「バーチャルならではの仕掛けが満載で楽しかった」「グループモードもあるので、今度は友達にも紹介して、一緒にやりたい」といったご感想が寄せられています。当初は9月2日から11月30日までの3カ月間の予定でしたが、来年2月末まで延長することになり、バーチャルの可能性を改めて感じました。私もミヤシタミステリーパークで謎解きに挑戦しましたが、バグに浸食された宮下公園という設定は面白いですね。

    松丸さん

    ありがとうございます。謎解きしながらバグを取り除き、平和な街を取り戻すなんて、リアルでは絶対にできない体験ですからね(笑)。あたかもテレビドラマでかっこいい俳優さんが演じるホワイトハッカーのような、仮想空間で「救世主」になれるイベントだと思っています。謎解きに参加された方のツイッターの書き込みを追ってみると、皆さん熱量の高いツイートばかりでした。今までにない強烈な体験をされた方が多かったのかなと思っています。

    謎解きの問題は僕は監修で入っており、メインの制作を務めたのは角谷進之介君(松丸さんが代表を務める謎解きクリエイター集団RIDDLER株式会社の社員)という斬新な謎解きを作る天才で、僕が信頼している優秀なクリエイターなのですが、謎を考える際、「リアルではできないけど、ゲームの中だからできること」をたくさん列挙しました。

    今回の舞台は公園。ちょっと懐古的になれる場所ですよね。誰しも小さい時、公園で遊んだ思い出や、友達と一緒に楽しんだゲームの思い出があると思います。こうした発想の中で浮かんだのがバグでした。ゲームには「バグ技」(注:プログラム上のミスで可能になる、ゲーム作成者が想定していない動作)というものがあります。いわゆる「すり抜けバグ」ですとか、マップ上にない道を歩けてしまうバグですね。そういうのをあらかじめ組み込んだものを作り、謎解きをしながらバグを追体験できたら面白いんじゃないかと考えたのです。

    大人になってから、子供心をくすぐるような遊びを体験できる場所がないなあと思っていました。でもイベントの中で「バグ技」みたいなものも体験できれば、子供の頃の原体験と結びつくのではないかなと思ったのです。もちろん、普通のゲームでしたら、それはプログラムのミスであるバグですが、今回の謎解きの中ではそのバグではないわけです。参加者の皆さんの感想を見ましても、「ゲームのバグを遊んでいるようで懐かしかった」というのがありました。僕たちの狙い通りと言いますか、作り手としてうまくいったなと思いましたね。


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