バイデン政権1年 停滞する日米通商協議

    20日でバイデン米政権発足から1年。この間、日米の通商協議は停滞している。バイデン政権が中国への対抗を念頭にデジタル分野やサプライチェーン(供給網)の強化で同盟国との協力関係づくりに注力する中、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など日本が目指す米国の自由貿易協定(FTA)参加への道筋は見えなくなっているためだ。米国による鉄鋼追加関税の問題も積み残されたままで、日本の対米通商戦略には手詰まり感も漂う。

    米ホワイトハウスで話すバイデン大統領=2021年11月30日、ワシントン(AP=共同)
    米ホワイトハウスで話すバイデン大統領=2021年11月30日、ワシントン(AP=共同)

    バイデン政権はトランプ前政権が軽視してきたアジア地域との連携を再び重視する流れにシフト。特に、日本が主張する「自由で開かれたインド太平洋構想」に同調し、この1年で対中国を意識した日本、米国、オーストラリア、インド4カ国の協力枠組み「クアッド」による経済安全保障強化などの動きが出た。こうした流れを日本が主導できたことは大きな成果だ。

    一方で、米国は、日本が参加を要請し続けているTPPや、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定といった巨大経済連携への参画から距離を置き、デジタルやグリーン(脱炭素)などをテーマにインド太平洋地域の新たな経済枠組みの構築を目指している。その具体像はまだ示されていないが、日本はTPPやRCEPの推進役としての立場を維持しながら新枠組みにどう関与していくのか、難しいかじ取りを迫られる。

    加えて、バイデン政権は安全保障上の重要技術の扱いや人権問題などでは中国への圧力を強める動きも見せており、日本政府は「米中の間でバランスを取りながら、国内企業への影響が小さくなるよう対応する必要がある」(みずほリサーチ&テクノロジーズ・菅原淳一主席研究員)など、通商戦略の練り直しが求められている。(那須慎一)


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)