オミクロン株「ステルスクラスター」 無自覚でウイルス伝播か

    全国で猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」では、感染しても無症状や軽症にとどまるケースが目立ち、症状を自覚せずに周囲に広げてしまう事例が確認されている。感染力が非常に強く、水面下で急拡大する「ステルスクラスター(感染者集団)」を専門家は危惧。高齢者や基礎疾患のある人が死亡する事例も出始めており、「まだ警戒を解く段階にはない」と訴える。

    「症状を聞いても熱があまり出ておらず、のどが痛いくらいのものだった。陽性判定が出て『本当にコロナなの』と驚いた」。東京都内でオミクロン株のクラスターが発生した団体の幹部はこう振り返る。

    この団体では昨年末、1人が発熱を訴えたのがきっかけとなり、18人の感染が確認された。大半は軽症か無症状で、中には倦怠(けんたい)感を覚えていた人もいたが、年末の繁忙期だったこともあり、「疲れがたまっているのだろう」と見過ごされていたという。

    この幹部は「オミクロン株はかかっているかどうか分かりづらいのが恐ろしい。知らない間に周囲に広がっていた」と語った。

    都によると、どこで感染したのか分からない接触歴不明の感染者は、12日時点の直近7日間平均で1日当たり735人だったが、19日時点では2988人まで増加した。接触歴不明者の増加比で見ると、9日時点で前週から約11倍と過去最高を記録し、19日時点でも約4倍と依然として高い水準で推移している。

    感染症対策に詳しい順天堂大の堀賢(さとし)教授はオミクロン株による感染急拡大の理由として、「本人でさえコロナにかかっている自覚がない段階で感染を広げてしまう『ステルスクラスター』ともいうべき現象が考えられる」と説明する。

    オミクロン株の症状は発熱や鼻水、のどの痛みが目立ち、従来株でみられた特徴的な嗅覚や味覚の異常はほぼ見られていない。「『花粉症かな』と思っていたらコロナだったケースもある。健康な人は症状が軽いので、コロナと気付く前に出歩いてしまい、ウイルスを運んでしまっている可能性がある」(堀氏)

    従来株に比べて重症化の報告例は現時点で少ないが、高齢者や基礎疾患のある人がかかった場合、命を落とすリスクは潜んでいる。大阪府ではコロナ感染者だった基礎疾患のある80代男性が死亡し、オミクロン株に感染していたことがその後確認された。

    都内の感染者に占める65歳以上の割合は今月に入り、6%程度にとどまっているが、感染者数は5日に24人、12日に127人、19日に435人と2週間で約18倍に急増している。

    堀氏は「過去の『波』では感染者数がある程度増えてから重症者が出ていた」と指摘した上で、「オミクロン株は健康な人では症状が軽かったとしても、高齢者や基礎疾患のある人には命取りになる可能性もある。少しでも体調に違和感を覚えたら必ず検査を受けてほしい」と呼びかけた。(竹之内秀介)


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