佐渡金山 推薦迫った自民保守派 外交姿勢に不満

    「佐渡島の金山」(新潟県)の世界文化遺産への推薦を決めた岸田文雄首相の判断には、安倍晋三元首相ら自民党の保守派議員の主張も影響した。昨年来、首相の外交姿勢に対する不満のマグマがたまり、公然と苦言を呈する場面も目立っていた。佐渡金山の推薦を見送れば政局の火種に発展しかねず、夏の参院選を控えた首相が政権の安定を優先した面もある。

    佐渡金銀山遺跡群の一つ、道遊の割戸=2019年12月、新潟県佐渡市(池田証志撮影)
    佐渡金銀山遺跡群の一つ、道遊の割戸=2019年12月、新潟県佐渡市(池田証志撮影)

    最大派閥の安倍派(清和政策研究会)を率いる安倍氏は28日、「首相の判断を支持する。冷静に正しい判断をされた。(登録に向けて)今後ともできる限り協力する」とのコメントを発表した。世耕弘成参院幹事長(安倍派)も記者会見で「当然の判断だ」と述べ、好意的な受け止めが広がった。

    自民内では一時、推薦を見送ろうとする政府内の動きが伝わると「韓国への過剰な配慮だ」と不満が表面化した。積極的に発信したのが安倍氏だ。27日の派閥会合で、首相時代に新任大使に対し「『歴史戦』を挑まれている中で戦うべき時はちゃんと戦う」と訓示したと紹介。自身のフェイスブックには「来年に先送りして登録の可能性が高まるのか? 冷静な判断が求められる」と投稿した。

    昨年の総裁選で安倍氏の支援を受けた高市早苗政調会長(無派閥)も24日の衆院予算委員会で首相に推薦を迫った。自民関係者によれば、文部科学相だった昨年に佐渡金山を視察した萩生田光一経済産業相(安倍派)も政府内で推薦を主張したという。

    首相が安定政権を築くには保守派の声を尊重せざるを得ない。「参院選前にわが党の岩盤保守層が離れる契機になる」(安倍派の高鳥修一新潟県連会長)との懸念もあるからだ。

    昨年12月には、北京冬季五輪への「外交ボイコット」をめぐり態度を明確にしていなかった首相に、安倍氏がBS日テレ番組で「中国に対する政治的メッセージは日本がリーダーシップをとるべきだ」と求めた。中国政府による新疆(しんきょう)ウイグル自治区などでの人権侵害行為を非難する国会決議に関しても、昨年12月の臨時国会での採択が見送られると「悔しい」(高市氏)と恨み節が漏れた。

    公明党幹部は「今回は首相が『聞く力』を発揮したのではないか」と分析。一方、「外務省が勝手に推薦見送りへ動いた」(自民中堅)と外務省への不信感が強まっている。(田中一世)


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