大阪市住之江区の北加賀屋に巨大なアヒルのアート作品「ラバー・ダック」をモチーフにしたマンホールがお目見えした。近年、限られたスペースに歴史や名所、名物などをデザインしたご当地マンホールが増えており、街中を彩るアクセントにもなっている。現地に行かないと出あえず、蓋を求めて歩く「マンホーラー」や「蓋女(ふたじょ)」らの注目を集めそうだ。
マンホールは、地元の不動産会社、千島土地(同)が昨年11月に設置。アイデアは令和元年夏、同社の社員が北加賀屋エリアのまちづくりに関する企画を考える「千島土地エリアマネジメントワークショップ」から生まれた。
ラバー・ダックは、オランダの芸術家、フロレンタイン・ホフマンさんの作品だ。北加賀屋とは縁がある。
毎年秋に地域活性化を目指して開かれているイベント「すみのえアート・ビート」では、造船所ドック跡に高さ9・5メートルの巨大なラバー・ダックが登場し、多くのファンも訪れる。イベントのシンボルになっている人気のラバー・ダックをさらに活用しようという試みだ。
荒木製作所(大阪府東大阪市)や住之江区役所の協力も得て完成したマンホールは、直径約60センチのフレームの中にラバー・ダックを配し、その周りにサクラと波をあしらった。
木津川の河口付近に位置する北加賀屋は、昭和の高度経済成長期まで造船業でにぎわった。造船所の移転後は人口減少や空き家の増加などに直面。その状況を打開しようと、空き家を芸術の拠点施設としてリノベーションするなどし「アートのまち」を打ち出している。
マンホールは、文化複合施設「千鳥文化」の前など同エリア内の8カ所に設置しており「足元」もアートで彩る。
近年、全国各地で増えている「デザインマンホール」。かつてマンホールは、無刻印やデザインがあっても市章などにとどまっていたが、昭和60年代に建設省公共下水道課建設専門官(当時)が下水道事業のイメージアップを図るため、マンホール蓋のデザイン化を提唱したのがきっかけだという。
最近では、地域のシンボルのほか、人気漫画のキャラクターも描かれるなど、バリエーションが拡大。現地に行けばもらえる「マンホールカード」を発行したり、ご当地マンホールを巡るスタンプラリーを企画したりと、観光コンテンツにもなっている。踏んでも落ちないことから、受験生のお守りとしても人気がある。
普段何気なく歩いていると目に入らないが、見て楽しいマンホールは、まさに路上のアート。千島土地の担当者は「ラバー・ダックマンホールが北加賀屋を訪れるきっかけになれば」と期待している。(上岡由美)