2024年11月に月軌道周回ステーション「ゲートウェイ」の建設をはじめるNASAにとって、老朽化したISSの維持費は重い。ISSの後継機となる低軌道ステーションの建設を民間に委託し、そのキー・テナント(核店舗)に収まることで、予算削減を図るという狙いがある。
▼ロシアと中国は独自にステーション建設
ISSで西欧諸国と協調してきたロシアは、「ROSS」の独自建設を表明。中国の「天宮」も2022年8月に完成する。各国各社のステーションは宇宙における前哨基地として活用され、有人による月開拓や火星探査が急速に進むことになる。
有人火星探査に向け資源、生命の痕跡を調査
2000年代に入ったころからNASAは火星探査を加速させてきた。多くの探査機を火星周回軌道に投入し、探査ローバーを計6機着陸させている。
現在、火星周回軌道上にある探査機のうち、もっとも古い機体は「2001マーズ・オデッセイ」。初期の予定運用期間は2年8カ月だったが、延長ミッションが重ねられ、この2022年4月にはトータル21年周年を迎える。
火星地表では「キュリオシティ」と「パーサヴィアランス」の2機のローバーが走り続け、パーサヴィアランスの相棒である探査ヘリ「インジェニュイティ」がテストフライトを繰り替えしている。また、着陸機の「インサイト」は火星の地中奥深くにセンサーを挿入し、火星で発生する地震を観測し続けている。
こうした探査によって、火星の資源、生命の痕跡などを調査しているのだ。
日本、欧州、ロシアは、こうしたNASAの計画に同調。一方、独自に火星探査を進める中国は、2020年に「天問1号」の火星周回軌道投入と、ランダーとローバーの着陸に成功している。
▼月開拓は火星探査の前哨戦
NASAのアルテミス計画の最終的な目標は、有人火星探査である。月軌道周回ステーション「ゲートウェイ」は、その前哨基地の役割も果たすことになる。また、スペースX社のイーロン・マスクは、2050年までに100万人を火星に移住させるという壮大な計画を掲げている。その実現のため同社は、先述した超大型宇宙船「スターシップ」を開発しているのだ。
2022年は、ロケットのデビューが続くと同時に、月の開拓が本格的に開始される年ではあるが、10年後、人類が火星に降り立つ日のことを、より現実的に捉えているに違いない。