総質量445トンのISSを「宇宙機の墓場」に葬る 宇宙にも影を落とすウクライナ情勢

▼再度上昇できなくなる地点まで、クルーがISSに滞在

下のグラフを見ていただきたい。タテ軸はISSの高度、ヨコ軸は時期を示し、3本の曲線は3つの状況下におけるISSの降下状況を表している。

ISSの大気圏再突入における平均高度予測(NASA / 「International Space Station Transition Report 2022」より)
ISSの大気圏再突入における平均高度予測(NASA / 「International Space Station Transition Report 2022」より)

このプランを見ると、ISSの軌道高度を2026年から2028年にかけて徐々に下げはじめ、その間に補給機3機をISSにドッキングさせる(グラフ上の3本の「Cargo Fit」)。

2030年の7月から11月にかけて、3機の補給機のエンジンを順次逆噴射させると(曲線上のオレンジのブロック)、ISSは急激に速度と高度を落とし、深い角度でポイント・ネモに落下する。

グラフ上で横に延びる破線は高度280kmを示しているが、これより低軌道に降下したISSは再度上昇できず、墜落を回避することができなくなる。グラフには、「Final Crew」として、この高度に達するまでクルーがISSに滞在することが示されている。

ロシアのISS補給船「プログレスMS」(NASA)

軌道離脱のためのブレーキの役目を果たす補給機には、ロシアのプログレスが想定されている。通常のプログレスよりもエンジン出力を上げた改良型が、ロシアの宇宙開発企業RSCエネルギア社で現在開発中だ。また、ノースロップ・グラマン社の補給船シグナスも候補に挙がっていて、こちらも改良型の開発プランが進められている。

太陽の活動影響で、ISSの降下時期が変わる?

前出のグラフにおいて、ISSの軌道高度を下げはじめる時期が2026年から2028年の間に3種(青、オレンジ、ピンクの曲線)想定されているのは、太陽の活動状況によってISSの降下速度が変化するためだ。

ISSが航行している高度約410kmの空間には、わずかに大気が存在している。太陽活動が活発になるとその大気が膨張し、ISSに掛かる大気の抵抗が大きくなる。抵抗が大きくなればISSの機速は想定よりも早く減速し、落下時期も早く、落下ポイントも手前になる。

グラフに描かれたピンク色のラインは、太陽活動がもっとも強い状況における降下プランで、つまりISSに対する大気の抵抗がもっとも大きくなる状況を想定した場合だ。

逆に太陽活動が落ち着いていると大気の膨張が抑えられ(青いライン)、ISSに掛かる抵抗値も下がる。そのため2026年10月ごろの早い時期に降下が開始されることになる。

こうした太陽活動の予測は、NASAを構成する施設のひとつであるマーシャル宇宙センターが担当している。3色の曲線は、この組織が想定する3つの大気状況を意味している。

ISS制御落下プラン…鍵を握るのはロシアの対応

バイデン米大統領が2021年12月、ISSの運用を2030年まで延長することを「確約する」と表明した。それにもとづいて今回のISS制御落下プランが公表されている。

しかし、ISSの運用はバイデン大統領の一存では決まらない。ISSに参画するロシア、日本、欧州、カナダの承認を得て、さらにはその予算案が各国で認可されてはじめて決定事項となる。

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