2022年は「スタートアップ創出元年」 シード・アーリーが日本経済の新たなけん引役に

双方向型のピッチイベント「Meetup Session」

起業家を支援するとともに、投資家とメディア、大企業の新規事業担当者との関係を構築するプラットフォーム的な役割を果たし、通常のピッチイベントとは異なり、双方向・少人数型としているのが特徴です。具体的には起業家が５分間のピッチを行い、その後に投資家とメディア関係者、DTVSのコンサルタントが1時間にわたって個別にフィードバックします。

Meetup Sessionには年間で約170社が登壇し1億円以上の資金調達を実現するなど、大きく飛躍した企業も少なくありません。登壇するのは、AIの社会実装やESG・脱炭素、Web3.0、分散化・オープンソース化、ノーコード・ローコードといった、次の時代を担う先端領域でソリューションを提供するスタートアップが中心となります。今回はこうした領域から5社を紹介します。

廃棄量が多い寝具を再生

yuni（東京都渋谷区）は、粗大ごみの中で廃棄量が最も多く、アパレルに比べてリサイクル率が大きく劣る寝具に着目、寝具の再生を行っています。具体的には選別・洗浄という工程を経てチップにした後、再製品化しており、法人・自治体」を中心に月間で2万枚ほどを回収、再生しています。また、ウレタン製品については、再生素材50％以上を含む「xRebirth」事業も展開。介護施設と提携し、介護用マットレスの新規購入時の引き取りを行っています。

議事録作成の自動化などをワンストップで

quintet（東京都港区）は議事録作成の自動化や、会議調整などの効率化をワンストップで行えるサービス「One　Minutes」を提供しています。プロジェクトごとに異なるツールを使うため多大な手間がかかっていますが、この部分をワンプロダクトで済むようにすることで課題を解決しました。今後は、顧客情報や議事録閲覧履歴、パフォーマンス評価などユーザーニーズの高い機能から業務連携の拡大を目指します。

究極のクリーンエネルギーによる発電目指す

EX－Fusion（大阪市中央区）はレーザー核融合商用炉の開発を進めており、核融合エネルギーによる発電を目指しています。核融合発電は燃料が無尽蔵であることに加え、CO2を排出しないことから、究極のクリーンエネルギーと言われており、日本政府も研究開発に意欲的な姿勢を見せています。研究過程で得られる技術を活用し、宇宙産業や次世代半導体製造、医療など産業分野の技術開発にも貢献していきます。

AIの異常をリアルタイムで検知し防御

Citadel AI（東京都渋谷区）はAIの異常を検知し、防御・可視化するソリューションを提供しています。AIは社会実装が進んでいますが従来のソフトウェアと異なり、時間と共に品質が劣化し、誤判断・誤学習につながる恐れがあります。AIの異常に事後的に対応していては手遅れとなるため、このソリューションではリアルタイムで異常を検知し、対処します。

コミュニケーションコーチング付きの親子料理ガイドサービス

Hacksii（東京都品川区）は、コミュニケーションコーチング付きの親子料理ガイドサービス「ハクシノレシピ」を提供しています。完全オンライン型の通信講座で、スライドコンテンツは幼児教育の知見がある社内チームで独自開発し、レポートは、実際のコミュニケーションに対するフィードバックを行なうことを強みとしています。今後はサービスを通じて認知度の拡大、ブランド化に向けて食育領域の事業の拡大を目指します。

政府はスタートアップ5か年計画を策定する計画を進めています。シード・アーリーベンチャーの台頭に弾みがつくことが予想されます。

久保 凜太朗（くぼ・りんたろう） デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社　グローバル＆インダストリー事業部。大手自動車メーカーにて市場情報部に所属し、海外市場の調査分析を通じた商品企画を担当した後、大手総合金融系企業にて海外ベンチャーとのオープンイノベーションに従事。インドのSaaSベンチャーとの新規事業を立ち上げ、プロジェクトマネジャーとして初年度から数億円規模の売上創出をリード。2021年より現職で海外ベンチャーと日本企業のオープンイノベーション創出や、国内のシード・アーリー期のベンチャー支援を担当。

【Fromモーニングピッチ】では、ベンチャー企業の支援を中心に事業を展開するデロイト トーマツ ベンチャーサポート（DTVS）が開催するベンチャー企業のピッチイベント「Morning Pitch（モーニングピッチ）」が取り上げる注目のテーマから、日本のイノベーションに資する情報をお届けします。アーカイブはこちら。