はじめに
上司に退職の意思を伝えるには、基本的には直接口頭で意思を伝えます。しかし、健康上の問題やセクハラなどの理由で直接顔を見て伝えることが難しい場合、メールで済ましたいと思う方も多いでしょう。
結論からいうと、退職の意思を伝えるのは、メールでも法律上の問題はありません。ただし、メールで退職願や退職届を送るのはマナー違反です。また、退職の意思をメールで伝え方にはいくつか気を付けるポイントがあります。本記事では、退職をメールで伝え退職するときの方法を詳しく解説します。
退職届や退職願をメールで提出するのはマナー違反
冒頭に「退職の意思をメールで伝えるのはOK」と伝えましたが、「退職届」や「退職願」といった正式な書類をメールで送って済ませるというのはマナー違反です。退職願は会社に退職を許可してもらう書類です。退職届は、退職願が正式に受理された際に、いつ付けで退職するかを正式に取り交わす書類。どちらも非常に重要な書類であり、受理してもらったことをしっかり確認しなければなりません。
また、退職する場合のフローは就業規則で細かく決めている企業もあるため、しっかり確認が必要です。あくまでも、メールで送ってOKなのは「自分が退職しようと思っている」という意思を伝えることまで、と考えておきましょう。その後、退職願・退職届を直接提出するという流れになります。
まずはメールで退職相談を行おう
退職の意思が決まったら、まずは「退職しようと思っている」という意思を伝えるのがベターです。いきなり退職願を出すと、上司側も突然すぎて受理するのにも困惑してしまいます。また、しっかりと退職相談をしないまま強行突破で退職するのはあまり気持ちのいいものではありません。まずはメールで退職相談をすることが大切です。
退職相談をメールで送る場合の例文
では、実際にどのようにメールで退職相談をすればいいのでしょうか。具体的な例文を紹介します。ぜひ参考にしてください。
面談のお願いをする場合
【件名】面談のお願い
〇〇課長(ここは直属の上司宛としてください)
お疲れ様です。
××チームの△△です。
お忙しい中大変申し訳ありませんが、私事で相談させていただきたいことがございます。
できれば、会議室等の人に聞かれない場所で、30分ほどお話を聞いていただけませんでしょうか。
〇月×日以降であればいつでも構いません。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒宜しくお願い申し上げます。
このメールで伝えているポイントは以下の4つです。
・仕事の内容ではなく、個人的なことでの相談であること
・所要時間
・人目につかない場所でしたい大切な話であること
・自分の面談可能な日時
このポイントを伝えることで、受け取った上司もある程度察しはつくでしょうからスケジュール調整の優先順位を上げてくれるでしょう。
退職意思を伝える場合
【件名】退職のお願い
◯◯課長(ここは直属の上司宛としてください)
お疲れ様です。
××チームの△△です。
突然のことで申し訳ありませんが、◯月末で退職させていただきたく、メールを差し上げました。
先日から相談しておりました持病のため、体調不良が続き医師に相談したところ「しばらく治療に専念するべきである」との診断を受けました。
自身も一度ゆっくり考えた結果、しっかりと治療をして完治してから新たな生活を迎えたいという考えに至り、退職を決意した次第です。
大変ご迷惑をおかけいたしますが、退職日までは有給休暇または傷病休暇とさせていただきたく存じます。
末筆になりますが、これまでのご指導に大変感謝しております。
持病が完治し、新天地での生活の中でも〇〇課長から教わったことを忘れずに過ごしていこうと思っている所存です。
また、このような重要な内容のお話をメールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
誠に恐縮ですが、退職についてご了承いただけますようお願い申し上げます。
このメールのポイントは、以下のポイントをはっきりと伝えていることです。
・いつ付けで退職するのか
・退職理由
・退職までの期間の出勤日をどう過ごすのか
・感謝の気持ち
・「退職届を出す」という意思表示
これらをはっきりと伝えることで「退職相談」なのか「退職する意思は固い」のか相手に伝えられます。「退職相談だ」と思われてしまうと、引き留められてしまったり個別面談の時間を設けられてしまったりするため要注意です。メールで退職の意思を伝える場合は、はっきりと「退職の意思が固い」ことを伝えましょう。
退職相談をメールで送る際のポイント4つ
送るべきメールの内容が分かったところで、メールを送る際のポイントについても紹介していきます。受け手のことを考えて以下の4つのマナーを守って送りましょう。
1.直属の上司に相談するのがマナー
まず、送る相手ですが自分の部署のトップではなく直属の上司に相談するのがマナーです。直属の上司が把握していないことを部署や会社のトップが先に知るというのは、ステップを1つ飛ばしてしまっています。直属の上司のプライドにも関わるでしょう。
まずは普段キャリアなどの人事関係を相談している直属の上司に相談しましょう。基本的に部署や会社のトップには、直属の上司から伝わるので、自分で伝える必要はありません。
2.繁忙期は避ける
当然ですが、繁忙期は避けましょう。企業や相手にもよりますが、繁忙期には正直「それどころじゃない」と感じてしまう人もいます。できるだけ円満に退職したいのは上司もあなたも同じ気持ちのはず。自分も会社で働いていたわけですから、どの時期が忙しくなるのかは大体把握しているはずです。
相手の立場に立ち、繁忙期は避け比較的落ち着いているときに相談しましょう。そのためにも、基本的に退職を考えだしたら相談する時期などを逆算し、相談や退社が繁忙期とかぶらないようにする必要があります。つまり、退職するにも計画性がある程度は必要なのです。
3.勤務時間外にメールする
業務時間中は業務をする時間です。退職相談は基本的に直接的な業務内容ではないため、業務時間外にするのが望ましいといわれています。業務中に自分の与えられた業務をせず、相談メールなどを送ると、上司の立場からすると「仕事をせずに自分個人のことをしている」という印象を抱いてしまいます。業務中はしっかり業務に励み、業務時間外にメールを送りましょう。
4.相談メールに「退職」の言葉は含めない
先に解説した通り「退職の話をしたいため時間を作ってくれないか」という相談メールには、「退職」という言葉は含めないようにしましょう。退職についての「相談」だと受け取られてしまうと、「まだ辞める決意は固まっていない」と判断され引き留められる可能性も出てきます。相談メールの段階では「退職」という言葉は使わないようにしましょう。
退職相談をメールで行うメリット
退職相談はほとんどの人が直接口頭で伝えているかと思いますが、メールで行うならではのメリットもあります。
上司に直接会わなくてよい
一番のメリットは「上司に直接会わないでよい」ことです。退職理由が病気などで通勤することさえも困難な場合や、そもそも退職する理由がその上司である場合など、上司に直接会うことが苦痛である人は多いでしょう。
「最後だから」と頑張って直接渡す人が多いと思いますが、どうしてもそれが難しいと判断した場合には、やむを得ずメールで伝えても大丈夫です。冒頭にもお伝えしましたが、「直接伝えること」は本来マストではありません。上司と直接会うことで、体調やメンタルに支障が出るほどの場合であればメールで送るようにしましょう。
確実に退職の相談を持ちかけられる
口頭で退職の相談をしようとすると、勘のいい上司だと先回りして退職を引き留めてくることがあります。お世話になった上司から引き留められるとどうしてもはっきりとは断りにくいもの。
「〇月じゃなくて、もう少し先に延ばせない?」「じゃあこのチームに配属するから続けてくれない?」「退職ではなくとりあえず休職にしたら?」などと、さまざまな提案をされてしまうでしょう。その点、メールはある意味一方的に送れるため「退職する意思は固く変わらない」「受理してください」とはっきり意思表示できます。
まとめ
退職願や退職届をメールで送って済ませたいという方は多いでしょうが、メールでそれらを送るのはマナー違反となってしまいます。ただし、退職の意思をメールで伝えることは問題ありません。
今回紹介したマナーやポイントを守って送れば大丈夫です。その後、退職願や退職届は文書を作成の上、直接渡しに行くか郵送で提出しましょう。郵送であれば顔を合わす必要もありません。退職理由によっては、顔を合わすことすら避けたい場合もあるでしょうから、1人で悩まず今回紹介したことを参考にしてください。