はじめに
未経験の職種・業界への転職に挑戦するとき、志望動機の内容の良し悪しが大きな意味を持ちます。ただ、「どんな内容にすれば未経験でも好印象な志望動機になるのか」と悩む方も少なくありません。
経験者に比べるとアピールできる点が限られる分、より好印象、高評価を得られる内容にしたいですよね。そこで今回は、未経験の場合の志望動機について、ポイントや例文を紹介します。
企業が提示する「未経験者」の定義
求人を見たとき、「未経験者可」「未経験者歓迎」と書かれているのを目にする機会は少なくないでしょう。ただ、この「未経験者」の定義は企業によって異なる場合があるのです。
たとえば、職種は同じ事務でも、運送業界から建設業界への転職を目指すという場合は「業界未経験者」に該当します。反対に、同業界で働いており、事務から営業など違う職種に挑戦したいという場合は、「職種未経験者」となります。そして、業界も職種も一切異なる仕事からの転職は「完全な未経験者」に分けられるのです。
上記のいずれを未経験者と定義しているかは、企業や募集職種によりさまざまです。そのため、応募前によく確認しておく必要があります。
なぜ企業は未経験者を求めるのか
未経験者を求める理由のひとつに、人員不足の解消があります。単に人手が足りていないケースや、職種や業界そのものが経験者が少ない傾向にある場合に、未経験者であっても積極的に採用する企業は少なくありません。
また、「これまでの職務経験」を活かした活躍が見込めると評価し採用するケースがあります。たとえ違う職種や業界であっても、これまでの経験によって独自の成長が期待できる、もしくは違う視点で業務や企業に新しい風を呼び込むと評価された場合が、これに該当します。
いずれにしても、未経験だからこそ他の社員よりもいっそう努力するという熱意や成長意欲が重視されるため、志望動機においては意欲をきちんと表すべきといえるでしょう。
未経験職種・業界の志望動機を書くポイント3つ
ここからは、未経験の職種や業界への転職を目指すための志望動機について、書く際のポイントを3つ解説します。
1.なぜその職種・業界を選んだのか明確にする
まず重要なのは、「どうしてその職種や業界を選んだのか」その理由を明確に説明できることです。未経験ゆえに戦力となるには時間がかかるからこそ、企業は志望者が自社にマッチする人材かどうか、一体どんな目的で転職を目指すのかを確認します。仮にミスマッチや転職の動機が自社が求める人材にそぐわない場合、入社後双方にとって不都合となるのを防ぐためでもあります。
たとえば、「なぜこの職種や業界を志望したのか」「どうしてこの会社を選んだのか」「入社後のビジョン」などを考えてみるとよいでしょう。選んだ理由をはっきりと示すことで、未経験であっても軸の通った動機と判断されやすくなります。
2.未経験を補うために行っていることをアピール
理由を明確にしたら、次に未経験によるスキル不足を補うための取り組みをアピールすべきです。ただ「未経験ですが努力します」だけでは、どう努力するのか具体性に欠けると判断されかねません。そのため、もし転職活動の時点で未経験を補うために行動していることがあるならば、積極的に主張することが大切です。
一例ですが、資格が有利に働く分野ならば「資格取得に向けて勉強している」、もしくは業界研究をこまめに行っているとアピールするのもよいでしょう。採用前から前向きに知識やスキルの習得に取り組んでいることを打ち出せば、「意欲が高い人材」という評価につながります。
3.前職の経験をどう活かすのか伝える
企業が未経験者に求める条件に合わせ、前職の経験から活かせるスキルなどを動機に盛り込むのも効果的です。たとえ初めて挑戦する職種や業界であっても、これまでの職歴や経験の中で共通する部分はあるはずです。そういった経験の活かし方を、具体的に伝えるような動機にしましょう。
たとえば、コミュニケーションスキルはどの職種にも不可欠な能力のひとつです。営業職ならば取引先との信頼関係、事務職なら社内の業務の円滑化、販売や飲食業であれば接客など、コミュニケーションが求められる場面はさまざまです。前職での経験や学びと応募企業の条件を擦り合わせた上で伝えることで、スキルの高い人材であるという印象を与えやすくなるでしょう。
未経験職種・業界の志望動機を書く際の注意点2つ
ここからは、未経験職種や業界の志望動機を書くにあたり、注意しておきたい点を2つ解説します。伝え方を誤れば、志望動機がかえって評価を下げる要因にもなりかねないため、くれぐれも留意しておきましょう。
1.自ら学ぼうという意思が見えない
たとえ未経験といえども、「教えて貰えばできる」、「教育面が充実しているから」というように、受け身の姿勢と取れるような動機は避けるべきです。本当に教育体制に魅力を感じていたとしても、「自ら学ぶ意思が見えない」とマイナスの評価につながりかねません。
教えて欲しい、教育を受けたいとストレートに伝えるのではなく、たとえば「学ぶべきことは自ら積極的に吸収し、いち早く業務に活かします」など自発的な行動を軸にするべきです。同時に、自身の成長だけでなく企業の利益や成長に貢献する旨を記載するとよいでしょう。
2.待遇面ばかりを重視している
働く上で、勤務時間や給与、休日などの待遇面は確かに重要です。しかし、志望動機として待遇面だけを伝えるのは避けましょう。「条件が良ければどこでもいいのか」と見なされる可能性があります。
大切なのは、応募企業において自身がどのように貢献できるか、そしてどう利益につなげられるかであり、企業もその点を重視しています。そのため、待遇面を盛り込んだとしても、同時に「企業で何を目指すか」「どのように貢献するか」を伝えるべきです。
未経験職種・業界の志望動機の例文
最後に、志望動機の例文を2つ紹介します。どちらも未経験職種・業界を目指す内容となっていますので、自身の志望動機を考える際の参考にしてください。
営業職から事務職の場合
「前職では、農業機械の営業として勤務していました。お客様の要望に応えられるような提案をすべく、お客様ごとに個別の資料を作成していました。そのため、資料作成のノウハウや、基本的なPCスキルやオフィスソフトの知識は持っています。
事務の仕事は未経験からの挑戦となりますが、業務に必要なスキルを自ら学び、いち早く戦力となれるよう努める所存です。また、お客様のニーズに合わせた資料作りを通じて身に付けた「わかりやすい資料を作る」という強みを、事務の業務でも活かせるのではと考えております。」
建築業界からIT業界の場合
「前職では、建設業界の企業にて勤務し、建物の構造設計の業務に従事していました。建築物の安全性を確保すべく、構造の計算および基礎、骨組みの設計などに取り組む中で、デザイン設計担当者、設備担当者とのコミュニケーションの構築を重視していました。
建築はさまざまな立場、職種の人間が力を合わせて完成する仕事です。この経験から、コミュニケーションスキルは円滑な業務に必要不可欠な能力であると考えております。貴社においても、ITの分社は未経験とは言え、この経験や身に付けたスキルを活かし、社内外の人たちと密にコミュニケーションを図り、確実な業務遂行に励む所存です。」
まとめ
「未経験では、経験者に比べて不利なのではないか」と考える方もいるかもしれませんが、未経験者は専攻において不利なことばかりでは決してありません。新しい視点を取り入れる目的や、意欲度、熱意が高い者を優先して採用する場合など、企業の目的によっては未経験者だからこそアピールできる点が見つかることもあるのです。
そのため、志望動機を考える際は、企業が求める「未経験者像」をしっかり視野に入れた上で内容を練ることが大切です。