アジアの今

    タイの親軍与党分裂 気をもむ日系企業

    タイの軍政を引き継ぐプラユット政権をめぐって進出する日系企業から不安の声が上がっている。盤石だったはずの与党親軍政党「国民国家の力党」で内紛が起こっているのだ。足元のタイ経済は、国内総生産(GDP)の成長率が新型コロナウイルス禍前の2019年を上回る3%台が期待されるだけに、水を差すのではないかと気が気でならない。混乱の揚げ句、再び軍がクーデターに打って出るのではないかとの観測もあり、予断を許さない情勢が続く。

    今年1月、タイを表敬訪問した萩生田光一経産相と会談に向かうプラユット首相(前列右)=バンコク(首相府提供)
    今年1月、タイを表敬訪問した萩生田光一経産相と会談に向かうプラユット首相(前列右)=バンコク(首相府提供)

    タイ中央銀行や財務省は今年のGDP成長率を3~4%台として、緩やかに回復基調に乗っていくと予想する。GDPの2割を占める観光も入国規制を緩和して外国人客を呼び込む方針に転換した。オミクロン株の感染はなお広がっているが、死者や重症者が少なく、〝開国〟を決断した。

    こうした状況下で持ち上がったのが与党内の内紛だった。1月下旬、同党は所属するタンマナット幹事長ら21人を除名すると発表。与党第一党の分裂が確実となった。同幹事長は農業・協同組合副大臣だった昨年9月、水面下で政権への不信任案可決を模索したとされ、責任を取らされたとの見方がもっぱらだ。他にも党を出る下院議員が10人超になりそうという事態が判明。30人を超える議員が野党に転じれば、連立与党は過半数をかろうじて維持できるにすぎなくなる。進出日系企業が懸念するのは、親軍政党下のトップダウンで進む公共工事や外国企業の誘致が頓挫しかねないという心配からだ。

    ただ、非議員で国民国家の力党とは直接的に関係のないプラユット首相もしたたかで、腹心議員に受け皿となる新党の旗揚げをひそかに命じるなど対抗策にも乗り出している。与党色を出さないまま事実上の閣外協力で政権を支えさせる意向だ。与党は嫌だがタクシン派が幅を利かす野党とも共闘したくないという中間派議員を取り込む考えだ。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)


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