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佐藤優氏「トランプ政権だったら、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった」 米国も軍を送ると脅せたはず

アメリカ政府で国際情勢を分析する専門家のレベルが、基準に達していない。

2022年6月26日、フロリダ州オーランドで開催された「2022年保守政治行動会議(CPAD)」で発言するドナルド・トランプ前大統領
2022年6月26日、フロリダ州オーランドで開催された「2022年保守政治行動会議(CPAD)」で発言するドナルド・トランプ前大統領

そのことは、昨年夏のアフガニスタンからの米軍撤退を見れば明らかでした。21年7月、バイデン大統領は「(反政府組織タリバンが全土を制圧する可能性は)ありえない」としていましたが、8月にタリバンは全土を掌握。ガニ政権の正規軍は30万人もいたのに、わずか7万のタリバンにまったく歯が立たないことを、事前に読めていませんでした。アメリカ型の正義がいつも勝つわけではないという半年前の失敗から、何も学んでいないのです。

アメリカがウクライナへ軍を送らないのは、国内での賛同が得られないからです。プーチン大統領は核兵器の使用をちらつかせました。第3次世界大戦のリスクがある介入をアメリカは絶対にしないとプーチン大統領が確信しているからです。バイデン大統領があまりに早くから軍事的な手段をとらないと表明してしまったため、プーチン大統領が勢いづいたのです。

バイデン大統領はロシアに対して、経済制裁くらいしか切るカードがありません。プーチン大統領は、2~3年後に結局はEU諸国が、ロシアの変更した現状を追認せざるを得なくなり、10年後にはアメリカもそれに倣うことになると考えているのでしょう。

トランプが再び大統領になる日

アメリカは、ロシアの暴力性を軽視したのです。ある程度の圧力をかけ、インテリジェンス情報の異例の公開だと言ってロシア軍の動きをオープンにすれば怖がるだろうと思ったのに、ロシアは怯みませんでした。またも大きな読み違えです。

私が問題だと思っているのは、アメリカのブリンケン国務長官が、2月24日に予定していたロシアのラブロフ外相との会談をキャンセルしたことです。

会談の実施は、ロシアが侵攻しないことが前提条件だったためです。ブリンケン長官は「いまや侵攻が始まり、ロシアが外交を拒絶することを明確にした。会談を実施する意味はない」と述べたそうですが、この判断は感情的すぎます。アメリカは軍事介入するつもりがないのですから、ロシアと交渉するしか手段がないのです。

外交では、相手が間違っているときや、関係が悪化したときこそ、積極的に会う努力をしなければいけません。ウクライナにおける戦闘の拡大を防ぐために、ブリンケン国務長官はいまからでもラブロフ外相と会談して、解決策を探るべきです。

ただでさえ支持率が低迷するバイデン政権ですが、ウクライナ情勢がこのまま混迷を続ければ、11月の中間選挙や2年後の大統領選挙に影響を及ぼすことは必至です。再びトランプ氏が大統領になることもあり得るのです。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優 構成=石井謙一郎)

佐藤 優(さとう・まさる)

作家・元外務省主任分析官


1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大矢壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。


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