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特派員発 米中間選挙区割り 攻防激化 塩原永久

11月に連邦議会の中間選挙を控える米国で、特定政党が有利になるよう各州で下院選の選挙区を線引きする「ゲリマンダー」をめぐる攻防が激しさを増している。二大政党である与党・民主党と共和党は全米各州で、州議会や知事、さらには州裁判所を巻き込んで争う。人種問題や政治信条をめぐる社会分断が広がる中、選挙の「公正さ」を疑わせる問題も深刻化している。

米東部ペンシルベニア州ハリスバーグの州庁舎で、州最高裁の公聴会を映し出したモニターに見入る傍聴者ら(塩原永久撮影)
米東部ペンシルベニア州ハリスバーグの州庁舎で、州最高裁の公聴会を映し出したモニターに見入る傍聴者ら(塩原永久撮影)

州最高裁を巻き込み

頭上のステンドグラスから光が漏れる厳粛な雰囲気の法廷に、州司法界の頂点に立つ最高裁判事7人が居並ぶ。その前で、地図などが描かれたパネルを使って、証言者が懸命に自分の案を訴える-。

米東部ペンシルベニア州の州都ハリスバーグの州最高裁で2月18日、通常の裁判とは趣を異にする光景があった。連邦下院選挙区の州内の区割りを決めるため、新たな区割り案を提案した州議会議員や市民団体ら13人から、裁判官が意見を聞く公聴会だ。

提案者たちは、判事たちに自分の案を身ぶり手ぶりで強くアピール。黒い法服をまとった裁判官が「あなたが示す区割り案で、分割されてしまう郡はいくつか」などと矢継ぎ早に質問を浴びせると、証言者が答えに窮する場面もあった。

各州が幅広い権限を持つ米国では、人口の変動などに応じ選挙区の境界線を定める選挙区割りを、州議会が担うのが通例だ。10年ごとの国勢調査が2020年に実施され、今年は人口の増減などを反映させて区割りを刷新する年に当たる。

11月の中間選挙を控え、民主党(シンボルカラー・青)と共和党(赤)の勢力が均衡する「パープル・ステート(紫の州)」の同州では、自党に有利な選挙区割りにしようと民主、共和両党の争いが激化。当初、共和党が多数派を占める州議会が区割り案を作ったが、民主党のウルフ知事が1月、議会案は「公平さを欠いている」と拒否権を行使。行政側で手詰まりとなり、訴えを受けた州最高裁が「特別管轄権」を行使して、区割り案の選定を引き受ける事態となった。

公聴会では、ある証言者が「ゲリマンダーを回避するには、変更する区割りを最小限にすべきだと思います」と主張。これに対し、判事から「変更が小さくても、何を基準に変えるのかが問題だ」と厳しく切り返される場面もあった。また、「(新区割り案で)マイノリティーの投票率は考慮されているのか」といった詰問調の指摘もあった。

傍聴していた政治監視団体のブライアン・ゴードン弁護士は「まるで建築家のデザイン・コンペみたいでしょう?」とつぶやいた。

米国では民主支持層が都市部に集中し、地方では共和支持の傾向が強い。地元紙によると、共和党系の区割り案は、都市部で民主地盤の地区だけを集めた選挙区になるよう線引きし、両党が競り合う郊外の地域を切り出して、共和党が強固な支持基盤を持つ地方の選挙区に組み込んだ。州全体で、共和党優勢の選挙区が増えるようにする戦術だ。

区割りが異様な形になる典型的な「ゲリマンダー選挙区」こそ現れなかったが、米政治分析サイトが選挙データなどから割り出した分析では、州議会案は、民主党の優勢区が5区にとどまる一方、共和党の優勢区は9区に達した。

現在、18ある同州の下院議席は民主9、共和9で分け合う。人口の伸びが鈍い同州では議席数が17に減ることが決定済み。今回の区割り変更では、1減となる選挙区割りをめぐる両党の駆け引きが焦点となった。

州最高裁は2月23日、13の区割り案から、民主党系グループが提案した案の採用を決定した。この案は、共和党が押さえている選挙区が1つ消滅する区割りとなり、共和党が「割りを食う」形となった。

7人の判事は、民主党系が長官を含め5人、共和党系が2人の構成だ。地元テレビ局の記者は「民主党のウルフ知事は、民主党系が多い州最高裁に判断を託せば、有利な区割り案が採用されると当然、読んでいたはずだ」と話した。


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