「他メーカーにできないクルマを作る」
あらためて思い起こすのはスバルのステーションワゴン4WDの歴史である。東北電力からの要請に応える形で4WDバンを開発したのが、スバルが4WD化に邁進するきっかけになった。雪深い冬の山奥での電線修理や電波塔の設置のために、東北電力は荷室が広く踏破性の高いモデルを希望していた。その期待に応えた。それがスバルのステーションワゴン4WDの誕生につながったというわけだ。
一方でスバルは戦後、フルサイズの高級セダンを開発した。だが、当時の政府はビックセダンの開発をトヨタと日産の専売とし、スバルの高級セダン開発は凍結させられたのだ。かくしてスバルは「他メーカーができないクルマを作る」という方向に舵を切ることになった。スバルが他メーカーが手掛けることの少ない水平対向エンジンを開発し、特異なステーションワゴン4WDを目指すことになったことと、それは無縁ではない。
そう思えば、レガシィ アウトバックが広い荷室を備えた4WDであることに納得する。そして乗り味は、かつてのお蔵入りになった高級セダンを彷彿とさせる。スバルのフラッグシップらしい存在感は、歴史がそうさせたのかもしれないと想像する。
ミニバンとSUVが時代の寵児になったいま、少数派とはいえ、安定した支持層の残るステーションワゴンをスバルは今でも開発している。
まさにスバルの歴史の具体なのである。
【試乗スケッチ】は、レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、今話題の興味深いクルマを紹介する試乗コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【クルマ三昧】はこちらからどうぞ。