ウーバーで偽札使用 裁判所が無分別女に出した量刑

    大阪市内に住む20代の女が昨年4月、1万円札を自宅の家庭用プリンターでカラーコピーし、ウーバーイーツの支払いに充てたとして、通貨偽造・同行使の罪で在宅起訴され、大阪地裁は3月、懲役3年(執行猶予4年)の判決を言い渡した。配達員は即座に偽札と見抜いて警察に通報。店側に実質的な被害が発生していないにもかかわらず、執行猶予付きとはいえ裁判所が3年もの懲役刑を言い渡したのはなぜか。背景には国家の利益に絡む特殊事情があった。

    余白をハサミで…

    訴訟資料によると、1万円札を偽造したのは大阪市大正区のマンションで1人暮らしをしていた当時大学生の女。生活費として親元から月額約8万円の仕送りを受け、自身もアルバイトで月に7万~8万円を稼いでいたとされる。学費は両親が負担しており、決して生活に困る経済状況ではなかった。

    そんな女が通貨の偽造に手を染めたのは昨年4月29日だった。ウーバーイーツでアイスクリーム6点(計4225円)を注文した際、家庭用のカラープリンターで白紙に1万円札を両面コピーし、余白をハサミで切り取って偽造。到着した配達員に手渡し支払いに充てようとしたが、すぐに偽札と見抜かれ、駆け付けた警察官によってあえなく〝御用〟となった。

    外国人配達員と知り

    カラーコピーという安直な偽造方法で、なぜ配達員を欺けると考えたのか。

    女はこれまでにもウーバーイーツを利用しており、過去に外国人の配達員が釣り銭の額を間違えたことがあった。ネット情報からこの日も外国人が配達に訪れると知り、「偽造した1万円札を渡しても分からない」と考えたのだという。

    女は逮捕はされなかったものの、半年後の昨年11月、通貨偽造・同行使の罪で在宅起訴された。

    大阪地裁は判決で、後日偽札だと判明し、自らが疑われる可能性を考えなかった経緯を「場当たり的」と指摘。「手元に十分な現金があり、配達員が外国人であることを分かった上で犯行に及んだ」と非難した。その上で、女が自らの未熟さや認識の甘さを自覚して反省していることなどを考慮し、4年間の執行猶予を付けることが相当だと判断している。

    傷害罪より重い罰則

    通貨偽造・同行使罪は刑法148条で、無期または3年以上の懲役と罰則を規定。窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)や傷害罪(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)と比較しても重い。

    人を傷つけたり物を盗んだりしたわけでもないのに、厳しい刑が科せられるのには理由がある。

    元検事の亀井正貴弁護士は「通貨に対する公共の信用性を保護するためにある条文で、国家の利益にかかわることから罰則は重い」と説明。そうした事情を踏まえ、「貧困や稚拙さといった事情があったとしても基本的に起訴は避けられない。社会的な混乱を招く可能性が低かったり、被害弁済がなされたりしていれば、判決で執行猶予が付く可能性はあるが、刑法の条文に従って3年以上の懲役刑は言い渡される」としている。(岡嶋大城)


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