富山県成長戦略会議の特別委員を務めた慶應義塾大学環境情報学部教授の安宅和人氏は、過疎地域の特性を「疎(一つ一つが離れている)」と表現。新型コロナウイルスの流行で疎が持つ価値への評価が高まっているが、過疎地域の現実は甘くはなく、非常に大きな改革が必要だと指摘した。モビリティにおいては、道路の維持管理にかかるコストは莫大で、未来からの借金を減らすために、都市部と同じ強度の道路を整備するのではなく、大型車が走る道路は一部に限定し、それ以外の道路のスペックを下げる必要性に言及した。また、医療の質を高めるためにも、ドクターヘリを飛ばして地域の医療体制を維持することなども提案した。
「しあわせる。富山」では、消滅可能性都市に挙げられた朝日町ではじまった、マイカー乗合MaaSサービス「ノッカルあさひまち」を通じた、高齢化と低密度化が進む地域で持続可能な移動サービスを実現する取り組みも取り上げられた。長寿命化が進む中、クルマの免許返納や一人暮らしが増えており、移動手段がないために生活不安を感じる人も多い。しかし、地方の多くではバス運行の採算をとることは難しく、タクシー運転手のなり手不足も深刻だ。住民が運転の担い手となり、タクシー会社はその運行管理役となる“共助型”の事業モデルやデジタル技術を活用した無理のない仕組みづくりが必要となってきている。
地方では自分でクルマを購入して運転することが一般的で、モビリティへの取り組みはまだまだ日が浅く、持続可能な仕組みを創り上げられていないのが実情だ。またウェルビーイングや幸福とモビリティを関連づけることは新しいテーマでもある。
今後、弱みを強みに変えるような大胆な逆転の発想で、新たな移動手段やサービスが生まれ、幸せ実感の高い人がさらに増えることに期待したい。