投資が飛躍的に増加 ロボットベンチャーが労働力不足とQOL向上に貢献

    デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「MorningPitch(モーニングピッチ)」というイベントを東京・大手町で開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげることを狙いとしています。

    モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はロボットです。

    労働力不足とQOL向上に貢献

    ロボットは大きく2つに分類されます。一つは産業に用いられる産業用ロボット、もう一つが主にサービス業などで使われ非産業用ロボット全般を指すサービスロボットです。

    ロボットを活用すれば、従来は人間が行っていた様々な作業を正確かつ高速に行い、生産性の向上と人手不足の解消、品質向上、安全確保、技術継承、省スペース、衛生的という7つの利点が生まれます。また、AIやデータを組み合わせることで、人間にはできないロボットならではの新たな価値創造も可能です。

    ロボットが必要な理由は、労働力が不足しているためです。

    国内の製造業就業者数は2002年の1202万人から2020年には1045万人と、約20年間で157万人減少しました。若年就業者数も、2002年の384万人から2020年の259万人へと3割以上減っています。製造業にとどまる話ではありませんが、労働力が不足している産業においては、ロボットは非常に期待されております。

    もう一つは生活の質(QOL)を向上させるためです。例えば介護分野では、同居している介護者の負担が大きく、約2割の方が「ほとんど終日」を介護時間に充てているというデータもあります。介護以外にも睡眠や食事の質の向上など、サービスロボットが活躍できる領域は多く、ロボットの代替によって、その人本来のQOL向上に充てる時間は増加すると考えられます。

    導入に積極的な外食産業

    業務・サービスロボット市場は順調に拡大するとみられています。富士経済研究所によると2020年の世界市場規模は約2兆3500億円でしたが、25年には、2020年比で1.8倍の約4兆1600億円となる見通しです。

    また、ロボット分野における2021年のスタートアップへの投資額は82億2900万ドル。この4年間で2.7倍と飛躍的に増加しています。

    サービスロボットは、すでに身近な領域でも活用が進んでいます。非接触での接客や効率化を目的に導入に積極的なのが外食産業です。複数のファミリーレストランチェーンを展開する大手は、ネコ型ロボットの導入を進めており、2022年末までに2000店で稼働する予定です。画面に映し出される表情や声で顧客とコミュニケーションを交わし、料理の配膳や食べ終わった食器の回収を行います。大手コンビニエンスストアは一部店舗で、店舗従業員の作業負荷が大きいバックヤード内での飲料補充業務を24時間行うロボットを稼働させています。

    生産工程で活躍する人間協調型の協働ロボット

    産業用ロボットの分野では、人と協力しながら働く人間協調型の「協働ロボット」の導入が進んでいます。従来は必須であった柵が不要で、小型・軽量であることが特徴となっております。設置や運転をはじめとして、レイアウトの再配置や工程変更が簡単で作業の柔軟性も高いため、産業用ロボットの導入が難しい生産工程などで導入が進んでおります。市場も右肩上がりで推移するとみられています。矢野経済研究所は2022年の世界市場規模を約1080億円と予測しており、30年には約2230億円と倍以上に成長する見通しで、様々なロボットの中でも注目の領域となっております。

    ロボットフレンドリーで社会実装を加速

    もう一つの大きなトレンドは、経済産業省が中心となって進めているロボットフレンドリーな環境の構築です。今までのロボットは特定ユーザー向けに特注でシステムを構築することが多く、過剰性能かつ高価格。ロボットの社会実装を困難にしていました。これに対し業務フローや施設環境を導入しやすい環境へと事前に改革することで、一品モノ化を避け社会実装を加速していくというのが、ロボットフレンドリーな環境を構築するための考え方となっております。

    それぞれ、施設管理・小売・飲食・食品などの分野に対し、個別に必要となるポイントがあり、それらを基に環境構築が進められています。例えば食品の場合、惣菜の盛り付けなど多くの人手を要する工程について、ロボットで実現しやすい方法や、安価な省人・無人化ラインの開発が進められています。


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