ロシア周辺全域が危険な「除外水域」に 海運への影響拡大

    ロシアによるウクライナ侵攻で両国周辺海域のリスクが高まり、船舶保険料の値上げや航海ルートの変更など海運会社への影響が広がっている。20日からは通航の危険度が高く、船舶戦争保険で割高な保険料が適用となる「除外水域」がすべてのロシア周辺海域に拡大される。新型コロナウイルス感染拡大による中国・上海のロックダウン(都市封鎖)もあり、世界のサプライチェーン(供給網)の混乱が懸念される。

    東京湾のコンテナ埠頭で積み降ろし作業中の船=3月6日
    東京湾のコンテナ埠頭で積み降ろし作業中の船=3月6日

    東京海上日動火災保険など損害保険各社は3月からウクライナ周辺の黒海やアゾフ海などを通航の危険度が高い除外水域に指定し、戦争による物理的被害や経済損失を補償する船舶戦争保険の保険料を引き上げた。4月20日からは除外水域がロシア周辺の全海域に広がり、影響が拡大する。

    保険料は戦況によって通常の数倍高くなることも想定されている。ある海運大手によると定期船は長期契約のケースが多く、運賃は保険料なども加味して設定されるため、「直ちに保険料上昇分を運賃に転嫁するのは難しい」という。だがウクライナ侵攻が長期化すれば保険料負担に応じ、運賃上昇の可能性が高まる。

    ウクライナ危機に関しては既に運航ルートの変更による影響も一部で出始めている。ロシア向けの輸出用自動車は、大型船により欧州の中継港に運んだ上で中型・小型船に積み替えて輸送するが、欧州各国がロシア向けサービスを中止したことで、中継港で行き場を失った自動車が滞留する状況を招いている。

    また、日本郵船はロシアから天然ガスを運搬するため、新造船4隻を令和5年から順次竣工(しゅんこう)させる計画があるが、市場環境が変化しているため、今後の成り行き次第では計画の修正を迫られる恐れもある。

    一方、海運業界では新たな懸念も浮上してきた。中国最大の経済都市である上海のロックダウンが解除された場合、停滞していた中国の経済活動と物流が急ピッチで動き出し、「コンテナ船の需給が急激に窮迫する可能性が高い」(SBI証券の山崎慎一シニアアナリスト)という。

    ロシアへの経済制裁による荷動きの減少などで海運需給の逼迫(ひっぱく)感は和らいでいたが、今年6月には米西海岸の港湾で労使協定の更新を控え、労使交渉の難航によるストライキも懸念されるなど、海運業界は多くの混乱の火種を抱えている。(西村利也、福田涼太郎)


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