これまで徹底した「アンチデジタル」の姿勢をとってきたジャニーズ事務所。しかし21世紀以降、その経営戦略に変化が生じている。この連載では、稀代のエンターテインメント企業であるジャニーズが「インターネット」というメディアにどう向き合ってきたのかを中心に、ここ数年の変遷を分析していく。
前回の記事を校正中に、ネット上で見られれるジャニーズ・グループのコンサート映像は、2022年現在のところ、「嵐の「Untitled」ツアー、「ARAFES2012」、Kis-My-Ft2 の「Web Fes」中の一本「LIVE TOUR 2019 FREE HUGS!」の三種類」である、ということが分かったのですが、訂正が更新に反映されず、結果、二日間ほど、<「Untitled」だけ見ることが出来る>という誤った情報が表示されることになってしまいました。誤情報、お詫びいたします。すいませんでした。すでに修正済みです。
なんでこんな勘違いをしてしまったかというと、すでに「ARAFES」の公開が終了していると勝手に思っちゃってたからですね。
「Untitled」と「ARAFES」のコンサート映像がアップされたのは2020年4月、つまり、第一回目の「緊急事態宣言」が出された(4月7日)その直後のことでした。当初は「期間限定」ということだったと覚えています。
この年の、すでに3月には、関ジャニ∞、NEWS、Sexy Zone、ジャニーズWESTなど、いくつかのグループが、2020年におこなう予定だったコンサート・ツアーの延期を発表していました。休止直前ラスト・イヤーである嵐はどうなるか……と思っていたところでこの「緊急事態宣言」。そして、この年の5月に開催予定だった『アラフェス2020』新国立競技場公演の延期が発表されます。
もはや正確な日付けを覚えている方も少ないと思いますが、「東京五輪2020」の2021年への開催延期が発表されたのが、3月24日。時系列的には「五輪延期決定」(3/24)「緊急事態宣言発令」(4/7)「嵐の「Untitled」コンサート映像のネットへの開放」(4/11)「『アラフェス2020』延期発表」(4/14)、「緊急事態宣言の全国への適用拡大」(4/16)……という順番ですね。
このような、日本全国規模の大騒動の渦中において、ジャニーズ事務所は積極的に「ネット配信」ライブの試みをはじめます。3月29日から4月1日までの4日間、ジャニーズは「Smile Up! Project」として、嵐を含む多くのグループのパフォーマンス映像をYouTubeで無料配信しました。「TV番組ではなく、ネット環境を使ってライブ/コンサート映像を独自にリリースする」という試みとして、これは前例がないほど大規模かつ先駆的な試みだったと思います。
たとえば、Zoomを駆使して「一度も実際に会わずに稽古し、作品を作り、ネット生配信で上演をおこなう」ということで話題となった「劇団ノーミーツ」の第一回公演『門外不出モラトリアム』がおこなわれたのが5月の後半のこと。GWあたりからはミュージシャンたちもライブ配信に取り組みはじめ、なかでも著者の記憶に残っているのは、2020年5月3日から5日までおこなわれた「VirtuaRaw ヴァーチャロウ」というオンライン・フェスです。
これは「日本全国のクラブやライブハウスが連動し、総勢50組以上のアーティストが出演するオンラインフェス」であり、「沖縄から北海道までの15会場をオンラインで繋ぎ、40時間に渡っての壮大なエンターテイメントをバーチャルでお届けする」という企画で、チケット代は前売りがわずか¥567(コロナ)。「ZAIKO」というプロダクト・サービスを使っての開催で、会場の名前を並べると、Club Brooklyn (北海道旭川)/ SuperDOMMUNE(渋谷) / heavysick ZERO (中野)/ FLAVA(町田) / OPPA-LA (江ノ島)/ 一宮町特殊対策本部(山梨) / TRANSIT(名古屋)/ OCTAVE KYOTO (京都)/ TRIANGLE (大阪)/ 三宅商店 (岡山)/ のむの(山口) / Kieth Flack (福岡)/ output (沖縄)/熱血社交場(沖縄) / G-shelter(沖縄) / GRAND SLAM (石垣)。
これらのハコはすべてかなり小規模な、地元密着型のクラブであって、山梨の「一宮町特殊対策本部」なんてクラブですらなく、メンバーが耕作している農地の外れの方に作った夜天のサウンド・システムからの中継で、バーベキューなんかもしていて楽しそうでした。